スナック菓子の市場シェアを50%以上持つカルビーは、基幹商品である「ポテトチップス」の新規ユーザー獲得のため、DataRobot(※)を活用したレシートクーポンの販促を実施。約1年のトライアンドエラーを繰り返しながら、従来の手法より購入率を5.7倍に上げることに成功した。プロジェクトの中心となって利用率改善を進めた、カルビージャパンリージョン企画統括本部リテールサイエンス部松永遼部長に話を聞いた。(※DataRobotは機械学習の運用・管理を一元化するAIプラットフォーム)
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――DataRobotを導入した経緯を教えてください。
松永 小売さんのID-POSを扱うのにデータ量が多く処理に苦労していたことや、従来の併売率を中心としたターゲティングでは、クーポンの利用率が約3%となかなか上がらないことが課題だった。以前から当社工場のプロジェクトでDataRobotを使用し評判がよかったこともあり、販売部門でも試すこととなった。
――使って難しかった点や良かった点はどんなところでしたか。
松永 DataRobotを触る前にトレーニングを用意してもらったが、教師データを使ったモデリングに時間を要した。データ量が多くデータの前処理が難しかったことや、結果として出てきた評価指標が解釈できないなど、トータルすると1年ほどかかってしまった。今はある程度クリアになってきたので、四半期くらいのペースで回せればいいなと思っている。
良い点は、導き出したデータは何が有効だったかが明確に分かるところ。そこが分かるとお得意先にも説明しやすくこちらも顧客理解度が高くなる。予測も正確で、顧客群のクラスター別に購入率を予測したものと実績がほぼニアな数字となった。また社内では売上につながるメリットに加え、従来は特売を打ってPOSを上げる商品起点での売上の作り方だったが、ID-POSを起点にすることで顧客理解度が上がり、営業としても感度の高い施策が打てるようになる。
――小売の反応はいかがでしたか。
松永 小売さんもいろいろ試してはいるものの、クーポンの利用率が上がらないという課題を抱えていて、今回「ポテトチップス」というメジャーな商品で利用率が大きく伸長した結果をみて感心してもらった。今後も成功事例を基に小売さんが気になるところを解決できればいいと思う。
――今後の活用についてはどのようにお考えですか。
松永 社内に関しては特定の人だけが使えるのではなく、事業部門で多くの人財が使いこなせるように勉強会などを開いて広めていく。販促以外にも、当社はカテゴリーリーダーをやらせてもらっており、現状は袋スナックと箱スナックなど、形状の違いで棚割りを組んでいるが、消費者の気持ちに寄り添った買いやすい棚を組んでいくことにも活用することができるのではないかと考えている。
――最後に松永さんの部署で目指すところを教えてください。
松永 「ショッパーの方の買い物体験を便利にしたい」というのが目指すところ。小売さんと組んでいく中で、お客様がお店を通じてカルビーのことを好きになってもらうような活動をしていきたい。今回のターゲティングクーポンや棚割りの話もそうだが、データをうまく活用しながら新たなチャレンジを続け、課題解決に向け小売さんとの共創領域を広げていきたい。