味の素 中計廃止し、中期ASV経営へ 成長4領域で30年に3千億円目指す

味の素はASV(味の素グループ・シェアード・バリュー『事業を通じた社会価値と事業価値の共創』)指標による中期ASV経営へのマネジメント変革を発表した。従来型の中期経営計画は廃止し、中期ASV経営に変革することで成長性の高い4事業に資源を集中し、持続的な成長を目指す。

2月28日に開いた「中期ASV経営 2030ロードマップ」発表の中で藤江太郎社長が明らかにしたもので、「精緻な数値を作り込み過ぎた中計策定を廃止し、挑戦的な「ASV指標」を掲げ、トコトン本気でASVを追求して実行力を上げる中期ASV経営へと進化させる」方針。

コーポレートスローガンの「Eat Well, Live Well.」は変えず、「志(パーパス)をアミノサイエンスで人・社会・地球のWell―beingに貢献する」とし、「2030年のありたい姿としてアミノサイエンスを生かし、食と健康の課題解決と同時に、その先にあるWell-beingにも貢献する想いを新しい志に込め、引き続き10億人の健康寿命の延伸と50%の環境負荷の削減に取り組む」。アミノサイエンスは、アミノ酸の働きで得られる素材や機能、技術、サービス、マーケティングの総称で、「これが競争優位の源泉」とし、4つの機能(呈味、栄養、生理、反応性機能)を食品事業とアミノサイエンス事業に生かす。

「中期ASV経営」に進化させる理由として、「中計病の払拭(何が起こるか分からないことだけが分かっている時代に、綿密に数字をつくり上げてきたが、数字通りにならないため計画が進まなかった)。そこで、ありたい姿を目指して挑戦的で野心的なASV指標を掲げ、30年までの道筋を明らかにし、毎月の進み具合をデータで見える化し、機敏な手をうち、実行力が上がれば企業価値の向上につながる」と語っている。

2030ロードマップにおいては4つの無形資産に投資する。「技術資産」は、おいしさ設計技術や先端バイオ・ファイン技術に代表されるアミノサイエンスなど。イノベーションを生み出す「人財資産」には、23~30年累計で1千億円を投資。「顧客資産」ではBtoBビジネスが3割、BtoCが7割、国内4割、海外6割の実態を踏まえ、グローバルで多様な顧客があることの強みを生かす。成長戦略では、成長性が高く社会価値の高い「ヘルスケア」「フード&ウェルネス」「ICT」「グリーン」の4領域で成長を目指し、4領域で30年の売上3千億円を実現する。

このうち「フード&ウェルネス」では、コンシューマー食品のエリア戦略を強化し、冷食は成長路線に成長させて収益拡大し、アジアン冷食では餃子で大幅伸長を図る。昨年12月にオンラインショップと味の素パークの共通IDを導入したことで業界最大級である月間840万人のユーザー情報を活用し、ECチャネルでテスト販売し新製品開発につなげる。