「平成の大不作」上回る危機 大阪海苔協同組合 村瀬理事長

有明海産の歴史的な不漁を受け、海苔業界は頭を抱えている。こうした中、13日に大阪市で開かれた大阪海苔協同組合・新年の集いで村瀬忠久理事長(大乾社長)は有明海の現状を報告。「平成の大不作よりもひどい状況になるかもしれない」と危機感を示した。また、稲野達郎副理事長(大森屋社長)は「生産者や漁連だけに任せるのではなく、われわれと生産者がもっと密になり日本の天産物を残していかなければならない」と強調した。

村瀬理事長の話

有明海では昨年も一昨年も、年間で40億枚近い海苔が取れた。昨年の全国の取れ高が63億枚なので、60%以上を有明海が占めている。今年の有明海は3回目の入札が終わり6億枚。昨年が11億枚だったので、5億枚の減産。今の時点でも(全国で)年間10億枚ほどの減産になると言われており、そうすると53億枚、仮に15億枚減ると48億枚という数字も見えてくる。

年間の国内消費量は85億枚を少し超えるぐらいで、これまで足りない分は輸入で賄ってきた。だが、中国はコロナ禍で入札会があまり行われていない状況で、今年はどうなるか。韓国の数量も今のところ分からない。いずれにしろ、海苔業界にとって厳しい年になるだろう。

平成12年に「平成の大不作」というのがあり、前年より約15億枚減って業界は大騒ぎとなった。今回はそれよりもひどい状況になると思われる。ただ、平成の時、巷では「海苔はもう取れなくなる」という話も聞かれたが、翌年は豊作だったと記憶する。

今年は海水温が低く悪い状況ではないが、プランクトンが粘っていることが影響しているようだ。雨が降ってプランクトンが流れてくれることを祈りながら、経過を見ていきたい。外国の旅行者も徐々に戻り、通常の経済活動に向かっている中、われわれも不作ばかりに振り回されることなく、自分たちができる限りの努力をして未来につなげていかなければならない。

稲野達郎副理事長(大阪海苔協同組合) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
稲野達郎副理事長(大阪海苔協同組合)

生産者と密に 稲野副理事長

昨年の株価は多くの財界人が年初に予想したものとは全然違っていた。ひとえにロシアのウクライナ侵攻によるもので、予想しても何が起こるか分からない。海苔業界についても同じで、ここまでひどくなるとは思っていなかった。買えるならまだ良いが、値段を出しても揃わない可能性も出てくる。

コロナ禍で人が動かなくなり、ホテル業界や飲食業界は非常に厳しかったが、テイクアウトや冷凍品を広げた。切羽詰まれば知恵が出る。われわれも、今まで通りの仕入れや販売方法だけでは通用しない。今こそ知恵の出しどころだ。

生産者や漁連だけに任せるのではなく、生産効率を高めるにはどうすれば良いのか、品種改良も含め、生産者とわれわれがもっと密になり、日本の天産物を残すため一緒に取り組むことが重要。今年は本当にしんどいかもしれないが、来年も再来年も商売を続けなければならない。ここにいるわれわれが支えなければ海苔産業は廃れてしまう。新たな決起の場としたい。

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