値上げは悪ではない デフレスパイラル脱し「正しい循環」を カルビー・伊藤秀二CEO

食品業界は、原材料高騰、エネルギーコスト上昇などの影響から値上げが相次いでいる。今後も先行き不透明な環境に加えて、24年の物流問題や人手不足など問題は山積みである。デフレビジネスを20~30年続けてきた日本は、この期に及んでも高度成長型の感覚から抜け出せていない。ステークホルダーが正しい循環をするために「値上げは悪ではない」とカルビー代表取締役社長兼CEOの伊藤秀二氏は訴える。本紙の取材に、考えを語った。

「価格帯の概念を変えるとき」

日本はデフレビジネスを続けてきた。当社も09年頃から生産性を上げ、消費を拡大することで利益を得てきた。これは市場拡大していくために通らなければいけない道であったことは間違いない。インフレの中で新しいバリューチェーンを構築していくことが経済成長の正しい循環につながる。

さまざまなコストアップ要因から値上げをした企業が多かったが、まだできていない企業も多いだろう。単価の低いものほど厳しい状況で、価格帯の概念を変えるべき時期きている。コスト増はメーカーだけでなく、生産者さんや卸さん、小売さんにも影響を及ぼしている。当社は昨年も今年も、契約生産者さんからの仕入れ価格を上げて購入している。ばれいしょを作るための肥料やエネルギーコストが上がる中、適切な対価を払わないと産業自体がしぼんでしまう。

値上げはメーカーがするもの、といった流れがあるが果たしてそうだろうか。小売さんは、電気代や人件費増による利益圧迫がみられる。消費者がストレスなく買い物ができるための手間とコストがかかるのは当然のこと。コロナ禍でライフラインを守ってくれたことで、エッセンシャルな仕事だと消費者からも認知されている。そこのコストを売価に反映しても消費者は理解してくれるのではないだろうか。

価格改定を行い、適正価格で得た利益を社員の給料に回すという循環を目指すべきだ。グローバルに見ても日本のレイバーコストは低くなっていて、それをベースに設定した価格だと将来回っていかないだろう。

家庭での調理は減っているが、ポテト加工品は冷凍も含めてまだまだ需要が高まるとみており、日本でのポテト産業は発展していく可能性が高い。また、2年前にさつまいもビジネスを始めたが、生産しただけ売れる状況。農業と連携し、国内産業や地方産業深耕の結果を輸出までつなぐことができればGDPを上げる事にも寄与できると思う。

菓子業界も競争ではなく共創していくべきだ。環境も変化し価格の消耗戦ではなく価値を高めあっていくことが重要。ビジネスをやっている以上儲けないと続かないという原則のもと、コストオンに関して勇気を持つべき。「お客様のために」という精神はだれもが根本に思っているところ、そのためには正しい商品を正しい価格で売ることが重要だ。

 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)