ワイン市場再拡大目指すメルシャン 挑戦相次いだ一年 「もう一度大きな流れを」 長林社長が意欲

ワイン市場の再拡大を目指すメルシャン。今年は大きなチャレンジに相次いで着手した。世界の作り手とのタッグで共創するブランド「メルシャン・ワインズ」を春にリリースしたのに続き、創業以来掲げる『日本を世界の銘醸地に』のビジョン実現へ、国内のワイナリー向けにコンサルティング事業も本格スタートした。

長林道生社長は23日の会見で「今年はメルシャンにとっても業界にとっても激動の年だった」と述べ、尾を引くコロナ禍や諸コスト高騰、円安などに翻弄された一年を回顧。「厳しい年だったが、学びも多かった」として、得た学びを業界発展につなげたい考えを語った。

ワイン事業の1―11月累計販売数量は93%。コロナ禍で落ち込んだ業務用市場は140%程度と回復基調にあるものの、家飲み特需の反動もあり今年の家庭用は約90%と苦戦が続いた。

そうした中でも「メルシャン・ワインズ」は好スタート。〈ブレンズ〉シリーズ第1弾として発売した「パーフェクト・ブレンド」は、スペインとオーストラリアのワインをブレンドする新しい試みのワインだ。

過去10年で最大規模の初動を記録したといい、「商品の価値やストーリーが少しずつ理解され始めた」(長林氏)と手ごたえを語る。高品質でありながら参考小売価格720円(税別)と低価格を実現したオーガニックワイン「サニーサイド オーガニック」も、8月末の発売から3か月で6.5万ケースと順調だ。

日本ワイン「シャトー・メルシャン」は11月まで前年同期比95%。ワイナリーの来場者数はいまだ回復していないが、オンラインを活用した情報発信の工夫で11月単月の販売数は116%と回復基調にある。

シャトー・メルシャンゼネラル・マネージャー安蔵光弘氏の半生を描き今秋公開された映画「シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~」が国際映画祭で続々と受賞するなど、日本ワイン活性化へも機運が高まる。

創業以来培った知見を生かした、コンサルティング事業も本格始動。国内のスタートアップワイナリーに向けて、社員やOBがブドウ栽培や醸造の技術指導に当たる。

「当社の経験豊富な人材と145年にわたる経験というアセットを活用した取り組み。ワイナリー支援だけでなく、日本ワイン産業の裾野を広げるためのパイプラインになりたい」。現在は東北を中心とした4ワイナリー向けにコンサルを実施。各地の自治体などからも問い合わせが相次いでいるという。

長林氏は「22年は厳しい外部環境が業績にも影響したが、そうしたなかで新たな発想や取り組みも生まれた。ピンチをチャンスに変えるべく来年も活動を行いたい」と抱負を表明。「CSVの柱をぶらさず、産地・畑の物語を届けることでワインを魅力的なものにする。抜本的な構造改革により企業価値を向上するとともにワインを通じて社会課題を解決。経済的価値も享受しながらもう一度大きな流れを作っていく」と意欲を示した。