キーコーヒー「コーヒーの2050年問題」解決へ本腰 部門横断の「コーヒーの未来部」を新設して一枚岩に

 キーコーヒーが4月1日に「コーヒーの未来部」を新設したことで、持続的なコーヒー生産に向けた会社レベルでの取り組みや社内外への情報共有が加速している。

 「コーヒーの未来部」は、研究所・調達・商品開発・広報などの各部門から抜粋した社員達で構成される部門間横断型の組織となる。

 このまま地球温暖化が続くと2050年にはアラビカ種コーヒーの栽培適地が15年比で50%にまで減少すると言う説の「コーヒーの2050年問題」への危機感が叫ばれている。

 会社としての新部署新設時には、柴田裕社長が直々に部門長を務めて、各担当班を統括する陣頭指揮を獲り迅速に意思決定が行われている。

 「これまでは各部署で様々な取り組みを進めてはいたものの、専門部署がなかったため持続的なコーヒー生産に対する情報管理も分散していた。社長が部門長を務める『コーヒーの未来部』設立によって、全社一枚岩となり専門的な課題に取り組む意思決定のスピードも上がり、1つ1つの取り組み案件を適切に且つ効率的に進められるようになった」(キーコーヒー)という。

 「コーヒーの未来部」が発足して半年後、2022年9月には国際協力機構(JICA)とアラビカコーヒーの生産改善に係る案件化調査の業務委託契約を締結。

 10月には生活者啓発を目的に、商品名は部署名そのものの「コーヒーの未来部」という専用商品の発売に漕ぎつけ、プレスリリースを通じ社外にも発信した。

 JICAとの取り組み案件は、キーコーヒー直営農園があるインドネシア・トラジャ地方で実施していく。

 まずは生産者達の意識・現状調査から開始するが、最終的にはアラビカコーヒーの単収向上を模索する。

 また、スマートデバイスが普及している同地区では、デジタルツールを活用した生産性改善支援も目的に調査を開始した。

トラジャ地方の協力生産農家の一環で開かれる「KEYCOFFEE AWARD」でキーコーヒーの柴田裕社長(中央) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
トラジャ地方の協力生産農家の一環で開かれる「KEYCOFFEE AWARD」でキーコーヒーの柴田裕社長(中央)

 キーコーヒーは1970年代からトラジャ地方で自社農園を運営し、周辺の協力生産農家に対しては品質と生産量向上を目的とした栽培・精選指導や生産者支援に向けた各種取り組みを進めており今後更にこの取り組みを加速させる。

 消費者啓発を目的とした専用商品は、「コーヒーの未来部」のシリーズ名で立ち上げられ、第一弾としてアラビカコーヒーの原種として代表的なティピカとブルボンに着目した2品が2022年10月より同社ECサイト、11月からは全国の直営ショップで発売された。

 国際的な研究機関ワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)とは、2016年から協業をスタートし、IMLVTを実施している。

 IMLVTとはInternational Multi-Location Variety Trial(国際品種栽培試験)の略で、世界各地を原産とする約40品種の中から各生産地で抱える気候変動にも耐え、生育、収量、品質などベストパフォーマンスを発揮する品種を探し出すプロジェクト。

 キーコーヒーは自社農園の一角を実験圃場として提供。昨年からある程度の収量も採れ始め、今年2年目の収穫調査を完了して生豆サンプルをWCRに提出した。

 キーコーヒーの今後の取り組みとしては、インドネシアを始めとする各コーヒー生産国での持続可能な品種テストなど、第三者機関との連携や情報発信を加速させていく。

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