日新製糖・伊藤忠製糖 持株会社「ウェルネオシュガー」発足へ

事業ポートフォリオを見直し・最適化 「食と健康」成長ドライバーに

日新製糖と伊藤忠製糖は、来年1月1日付で持株会社体制に移行し経営統合する(本紙10月7日号既報)。昨今、コロナ禍で国内砂糖消費が急減する中で原料やエネルギー・物流コストが高騰。砂糖産業の経営環境は厳しさを増し、一層の経営効率化、経営基盤の強化に迫られている。砂糖業界はこれまで企業統合や工場集約を重ねてきたが、DM三井製糖に続く業界2位グループの経営統合により、業界再編の動きはいよいよ大詰めを迎えている。砂糖事業の収益基盤強化、製糖企業の未来像など、両社の経営統合は期待と関心を集める。このほど開催した持株会社・ウェルネオシュガー発足記者発表で両社トップが経営統合の背景・目的、今後のグループ経営方針を語った。

経営効率化・事業ポートを最適化 日新製糖・樋口会長

国内の砂糖消費は、平成の30年間で約90万t、直近の10年間で約30万t、5年間で約20万t、コロナ前後の2年間で12万t減少した。その間、精製糖企業の会社数・工場数は、24社・21工場から13社・12工場へと集約化が進んでいる。また、ここ数年はコロナ禍に加えて、ウクライナ危機や円安の影響を受け原料、燃料、物流コストが高騰するなど、事業環境の不確実性が高まっている。

今回の経営統合を通じて、業務体制・人的資源の最適化、生産拠点の効率化、物流網や原料調達網の集約・整理を行い、効率的なグループ経営を推進する。これまで両社が取り組んできた独自性の高い新素材に関する研究開発や新商品開発を積極的に行い、人々の健康への貢献を目指して今後の成長分野や注力分野に取り組む。

また、事業ポートフォリオの見直しと最適化を行い強固な収益基盤を構築することで、「食」と「健康」の両面で豊かな生活の実現に貢献できる企業グループとしてさらなる成長・飛躍を目指していく。

「糖」の可能性・「幸せと健康」の実現 伊藤忠製糖・山本社長

持株会社の社名「ウェルネオシュガー」には「Well-being(幸せ・健康)+Neo(常に若々しく・日々新たに)+Sugar(糖を基軸に)」の思いを込めた。また、グループの経営理念として「糖を軸とした高品質な製品・サービスの提供により、人々の幸せと健康を創造する」と掲げた。「糖」には、砂糖だけではなくオリゴ糖など砂糖から作られる派生商品も含まれており、大きな可能性を秘めている。新たな製品・サービスの開発・提供を通じて人々のWell-being実現に貢献したいと考えている。

最適な生産・販売体制を構築

経営の基軸となるのは砂糖(Sugar)事業であり、製糖のリーディングカンパニーとして、経営基盤のさらなる強化、安心・安全・安定的な供給体制の維持にしっかりと取り組む。グループの国内精糖工場は4拠点(関東・関西・中部・九州)。経営統合により全国的な生産・販売体制を築くことが可能となる。また、日新製糖は家庭用商品に強みがあるが、当社は業務用・ユーザー向けが強い。両社が保有するアセット・知見を最大限活用して最適な生産、販売体制を作っていきたい。

Food&Wellness事業に積極投資

Food&Wellness(食と健康)事業は、グループの成長ドライバーとして位置付けている。今後積極的に経営資源を投入し、多種多様な機能性素材を開発・提供していく。これまでも両社は、「糖」を起点とした様々な商品・機能性素材を開発してきた。オリゴ糖では、当社の「沖縄・奄美のきびオリゴ」や「ケストース」、日新製糖の「カップオリゴ」など。

また、日新製糖では虫歯・歯周病の原因となるプラークの形成を抑制する「サイクロデキストラン」も展開している。経営統合によりグループとして一体的な研究開発体制とすることで、これまで単独ではなしえなかった成果を創出できるものと期待している。

2022年3月期の経営実績(日新製糖/伊藤忠製糖) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
2022年3月期の経営実績