ダイドーグループホールディングスの髙松富也社長とサイボウズの青野慶久社長が対談した。会場はサイボウズが6・7の両日、大阪市のグランフロント大阪で開催したDX(デジタルトランスフォーメーション)事例などを紹介するITビジネスイベントの7日に行われた特別公演で、経営やDXについて青野社長が髙松社長に質問する形式で行われた。公演会場はほぼ満席の400人強が詰めかけた。(以下、対談内容を抜粋)
自販機数十万台 リアルタイムで情報把握 社会インフラに
青野 貴社が自販機に特化した理由は。
髙松 飲料市場は競合が激しく、他社との差別化を追求した結果として自販機の構成比が上がった。「自販機は当社の店舗」と思っている。品揃えから清掃、商品管理などすべて行う。手間もコストもかかるが安定したチャネルとして特化してきた。飲料業界全体の自販機売上の割合は4~5割だが、当社は8割と高い。各地の方言を話すおしゃべり自販機など注力している自販機をいかに最大限生かすか、地域の消費者が感じる楽しみ、喜びに注力している。
青野 14年の社長就任からの取り組みは。
髙松 業績が少しずつ厳しくなっていたころだった。過去の成功体験からなかなか抜け出せずにいた。まずは企業理念から変え、以前の「共存共栄」の趣旨に「チャレンジ」の趣旨を加えた。そして当時の全国の事務所約100か所をすべて訪問し、理念を変えた思いを伝えた。そして次年からは従業員の意見・思いを話してもらうことを主に、食事の機会も含めて再度全国を回った。
青野 どんな意見が出たのですか。
髙松 新しいやり方に否定的な意見やネガティブな質問もあった。2~3年は全国を回りながら一つ一つ丁寧に説明し、コミュニケーションを取り続けた。そうすると少しずつ前向きな意見が出てくるようになり、社員のアイデアをもっと生かす仕組みを作った。これが今も続いている「チャレンジアワード」で、年に1回開催し良いプレゼンには予算も付けるので、自分たちの意見がきちんと形になることが浸透し、少しずつ変わっていった。DX関連も社員から意見が上がり、約2年前に「DX推進委員会」が立ち上がり、新たな組織に進化している。
青野 自販機にDXを組み入れたスマートオペレーション(SM・O)とは。
髙松 自販機は無人だが、補充など管理にかなり人手がかかっている。SM・Oは、自社の数十万台の自販機すべて通信機材を付け、リアルタイムで販売状況が分かるもの。これまでの担当者の経験などによる補充数や品揃えから大きく改善を図った。これで1.2~1.5倍の自販機を担当でき、人手不足解消にもつながった。
青野 今後の野望は。
髙松 ダイドーの自販機が社会のインフラと思っていただける存在になりたい。各地域で「ダイドーの自販機があって良かった」と思っていただけるよう、新価値を創出し、社会や地域などに貢献していきたい。
◇ダイドーグループHDは22年1月から「中期経営計画2026」が始動。経営課題の一つに「DX推進とIT基盤構築」を掲げている。22年7月から業務改善プラットフォームを導入。複数部署のデータ管理・集約などのほか、従業員が自発的にアプリ開発を行い、課題解決につなげる取り組みを進めている。