スーパーや量販店などで売られる家庭用レギュラーコーヒーでカフェチェーンや老舗喫茶店の名前を前面に押し出した専門店ブランドのレギュラーコーヒーが拡大している。
行動制限はなくなったものの、依然としてコロナ禍で外出を控える傾向が続く中、「おうちでカフェや喫茶店の専門店の味わいを楽しみたい」という家庭で飲まれるコーヒーの味覚水準の向上が背景。
コーヒー豆高騰や円安の影響で店頭価格が上昇傾向にある中で、コーヒーは二極化やメリハリ消費が進み、値ごろ感のあるコーヒーとともに高品質な専門店ブランドのレギュラーコーヒーが支持を集めている。
カフェチェーンブランドで急拡大しているのは、ネスレ日本が販売するスターバックス家庭用商品。昨年は1%増と推定されるレギュラーコーヒー市場の伸びを大幅に上回り、22%増を記録し今年も好調を維持している。
今年、伊藤園も「TULLY’S COFFEE(タリーズコーヒー)」ブランドで家庭内需要に対応した商品を“おうちタリーズ”と称して本格展開。
同社は昨年6月、初のおうち商品としてドリップバッグ(ドリップコーヒー)をスーパー・量販店・コンビニ向けに発売開始。その後、市場では珍しい個包装タイプのレギュラーコーヒーを発売して売場を少しずつ獲得し今秋冬に商品の拡充を図った。
喫茶店ブランドでは、直営の喫茶店を多数展開する小川珈琲の「小川珈琲店」シリーズの伸長が挙げられる。
同社はSDGs・エシカル・情緒的価値などの点で“小川珈琲らしさ”を追求し、それに創業の地である京都の価値を加えて「言葉だけの専門店ではない確固たるブランドをつくっていく」(小川珈琲の村上祐一総合開発部長)考えだ。
キーコーヒーは「珈琲とKISSAのサステナブルカンパニー」を開発テーマに掲げ、喫茶店ブランドのコーヒーに商機を見出す。
昨年、京都市内を中心に喫茶店「イノダコーヒ」を運営するイノダコーヒ(本社・京都市)と業務提携契約に向けた基本合意書を締結して9月に新発売した「京都イノダコーヒ」ブランドの販売好調を受け、そのラインアップを拡充している。
この秋冬に向けては、レギュラーコーヒーの豆カテゴリーに着目して新商品を投入。9月1日に「こだわりのオリジナルブレンド」「こだわりのモカブレンド」「有機珈琲 古都の味わいブレンド」の豆3品を新発売した。
キーコーヒーの小笹チームリーダーは「豆カテゴリーは20年にコロナ禍による巣ごもり需要で大幅伸長し、その後も売上げを落とすことなく伸長している。家庭用ミルの販売も伸びていることから、ご家庭で豆を挽くことからしっかり楽しみたいニーズにまだまだ伸び代がある」との見方を示す。
UCC上島珈琲はプレミアム市場の開拓に向けて「GOLD SPECIAL PREMIUM」ブランドとともに「上島珈琲店」ブランドに注力している。
「ショップブランドは競合を含めかなり伸びてきている中で、『上島珈琲店』は神戸発祥という点や常に革新的で磨きをかけている点など別軸で提案できている。配荷はこれからだが、導入企業さまから店頭回転(販売)でご好評をいただいており、ショップブランドも今後注力していく」とUCC上島珈琲の伊藤佳世嗜好品マーケティング部部長は意欲をみせる。
味の素AGF社は「北海道珈琲店 森彦」を運営するアトリエ・モリヒコ監修のもと開発したレギュラーコーヒー「森彦の時間」シリーズが好調。
「ホームタイプ・パーソナルタイプともにお客様に支持され、ブランド全体では21年10月~22年3月の金額ベースで前年同期比116%と拡大している」(味の素AGF社)という。
そのほか専門店ブランドのレギュラーコーヒーとしては、猿田彦珈琲や丸山珈琲といった大手NBメーカー以外のアプローチも活発化している。