ものみな上がる10月も 取り残されるお茶業界 しわ寄せは生産農家に

この10月、多くの加工食品が価格改定を行ったが、動きのみられないカテゴリーもいくつかある。その一つがパック茶(包装茶)だ。急須で淹れて飲む茶葉を個包装にして100g500~800円程度で販売しているもの。唯一のNBメーカーである伊藤園が10月から5~7%の値上げを発表し末端売価も10~20円ほど上がっているようだが、これに追随するメーカーはみられない。

お茶の生産・加工に欠かせない重油や肥料などが値上がりしている。特に窒素系の肥料価格が急騰し、1アール当たり5万円と言われる年間の肥料代が7万5千円に跳ね上がるという試算もある(JA静岡経済連)。国は肥料価格高騰対策事業で上昇分の7割を支援し、そのほか各県単位での支援もあるため上昇分のほとんどは相殺されそうだが、諸々のコスト高から農家の生産コストは間違いなく上がっている。

上昇分を茶商(メーカー)に売り渡すときの茶価に転嫁できれば問題はないが、規模の小さいメーカーがほとんどの茶業界は、食品スーパーなど小売に対する発言力は、お茶離れもあって極端に弱い。唯一、価格交渉ができた伊藤園だが、パック茶市場でのシェアは3割に過ぎない。地域ごとに有力な茶商が小売の口座を持っているパターンが多く、有力といっても売上規模は10億円程度ということも少なくない。「値上げは恐くて言い出せない。ならばおたくを止めて違うお茶屋さんに頼むと言われる」ことが目に見えると言う。

伊藤園は、「体脂肪を減らす」で機能性表示食品を取得したパック茶や、ティーバッグ、粉末茶を持ち、付加価値を持つお茶を拡大していくためにも品質の担保は欠かすことができないというインセンティブを持つが、多くの茶商は小売との力関係から値上げを言い出せずにいる。PBでは唯一、ハラダ製茶が納価交渉を始め一部商品で結果を出している程度。

ここで値上げをしておかないとしわ寄せは生産農家に集中するが、現状を冷静に見る茶商もいる。コメは苗を育て田植えをしないと収穫できないが、お茶は施肥で手抜きをしようが春になれば新芽が伸びる。今の茶価低迷は供給過剰も大きな要因のため、ここで茶園の維持に見切りをつける生産者が増えれば生産調整ができるというもの。茶商も、残って欲しい農家とはパイプを太くしつつある。価格を据え置かざるを得ない茶業界は厳しい状況に置かれている。

EU農産品  - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)