〈寄稿〉ESGとブロックチェーン SDGs淘汰の危険性 三枝国際特許事務所 中小企業診断士 柚木正人氏

食品業界にとって、安心・安全を保障するトレーサビリティの重要性は言うまでもないが、これまでとは注目される点が異なってきている。

SDGsのゴールの一つである「つくる責任、つかう責任」は企業の信用の捉え方に変化をもたらし、環境・社会・企業統治の文脈から企業の社会的責任を示すESGに注目が集まっている。今、企業の評価はESGの観点もスコアリングされており、「モノがどう流れているか」を把握することは重要な評価指標となる。

ESGでは、モノの品質や環境問題のみが問われるわけではない。社会的責任の観点では「人権問題」も含まれる。例えば、不当な労働環境や強制的な児童労働で生産されている製品は採用されない。税関において輸入を禁止された事例もある。

また、「即座に追跡可能であるか」が問われ、不明瞭であれば正当な製品であるにもかかわらず「疑わしいモノ」として扱われることになる。これは「SDGsにより淘汰される」ことを意味する。トレーサビリティの意義は、幅広い信用情報となっていることが分かる。

トレーサビリティにおいてはデジタル化が加速しており、明確な可視化はもとより状況把握のリードタイムが大幅に短縮できるためメリットは大きい。しかし、サプライチェーンの情報をデータで管理すると、改ざんのチェックは大きなコストとなる。

近年、トレーサビリティの電子化としてブロックチェーンを利用する動きもある。仮想通貨でなじみのある技術だが、その特徴としてデータの改ざんが困難な点があり、管理コストが低減可能である。また、誰もが参照可能なオープン情報は透明性の担保につながる。サプライチェーン管理の効率化は、食品ロス抑止も行えメリットは大きい。

可視化の手段として、ブロックチェーンが唯一というわけではなく、重要なことは「分かりやすい可視化」である。近年のデジタル技術は、革新的で目新しいものは少なく、これまであった仕組みの組み合わせによる簡素化が多い。これは、分かりやすさと導入コストの低下を意味しており、大抵のDX(デジタル化)製品はスモールスタートに最適なエコシステムである。複雑性を実現するには足りないが、導入が容易なことから最初のステップとしては有効な手段といえる。

「誰もが分かりやすい」取り組みを行っている企業は、取引に参入しやすい上、消費者にも支持される。これは、経営の安定に直結することになる。SDGsは儀式ではない。前述でも触れた通り、SDGsにより淘汰されることがないように、社内では強いメッセージで意識づけを進めておきたい。

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