豆腐トップの相模屋食料は、長年にわたって豆腐の進化や売場の変化に力を注いできた。今年は原材料やエネルギーコストの上昇を受けて価格改定に取り組んでいる。鳥越淳司社長に昨今の取り組みを聞いた。
新商品、すべて百貨店向け 「三之助らしさ」大事に
今春、もぎ豆腐店が傘下に加わった。同社中興の祖である茂木稔氏は「最高の豆腐を作る」という思いで豆腐作りに取り組んだ。その時代に戻したい。原価は関係なく最高の豆腐を目指し、他社が絶対に真似できない手法で作る。相模屋食料がやりたくてもできなかったアプローチだ。
三之助ブランドの新商品を発売していくが、すべて百貨店向けでスーパーには卸さない。このブランドでスーパーの売場を広げる気はない。新商品も「三之助らしさ」が大事であり、豆腐の根幹の部分を深掘りしていく。
10月から豆腐と揚げ物の価格改定を実施する。グループ全体では値上げしない商品もあるが、相模屋食料本体の商品はすべて値上げする。改定率は10%だ。
大豆以上にエネルギーコストの上昇が大きい。従来は原材料価格が上昇しても稼働率を上げることでまだ耐えることができた。今回のようにエネルギーコストが上がると、稼働すればするほど利益面が悪化していく。
トップメーカーが値上げに踏み切らないと、同業他社もなかなか値上げができない。いま各地で有力メーカーがバタバタと倒れている。当社は一生懸命救済活動を行っているが、昨今はその活動も追いつかないような有り様だ。
つぶれないためには値上げするしかない。当社の改定率10%は一つの指標であって、値上げ幅は各メーカーが考えればよいことだ。豆腐業界は値上げを実施しても製品価格の適正化にはほど遠い状況だが、とにかくこれ以上つぶれないでほしい。
値上げによる販売量への影響はあるだろう。販売個数は落ちるかもしれないが、当社のベーシック豆腐の販売はむしろ少し落ち着いた方がよい。ここで無理をしてまで広げない。それよりも当社がこれまで取り組んできた「おいしさを磨く」をさらに掘り下げるよい機会である。
また、豆腐に消費者の目を向ける好機でもある。あらゆる食品が値上がりする中、「今までと違う商品を買ってみよう」と考える消費者も少なくないはずだ。献立を考える際に「結構おいしい豆腐が売場に並んでいる」と想い起こす。このニーズにきちんと対応できるのであれば今はチャンスと言える。