アサヒ・ダイドー 非競争領域で連携 自販機オペレーションと製造を両社補完

 アサヒ飲料(アサヒ)とダイドードリンコ(ダイドー)は非競争領域で連携する。

 15日、両社は自動販売機事業に関する包括的業務提携契約を締結。
 これは主に、自販機相互販売の対象商品を増やして両社ブランドの顧客接点を強化する内容に加えて、アサヒはダイドーから自販機オペレーションのノウハウを取り入れる一方、自社工場を持たないダイドーは一部商品の製造をアサヒの工場に委託することで原価低減を図る内容となっている。

 今回の連携強化は、自販機ビジネスの寡占化が進んでいることへの危機感の表れとも受け取れる。

 15日会見に臨んだダイドーの中島孝徳社長は「自販機市場で勝ち残り、寡占の一角を占める企業に向かって我々は着実に歩みを進めていきたい」と述べる。

 そのための方策として、自販機オペレーションでは、アサヒ100%出資子会社3社とダイドー100%出資子会社3社の計6社の自販機オペレーション会社を統括する新会社・ダイナミックベンディングネットワークを2023年1月23日に設立して直販事業の一体的運営を目指す。

 新会社は、ダイドー66.6%、アサヒ33.4%の出資比率でダイドーが主導。新会社の社長にはダイドー取締役執行役員経営戦略部長の笠井勝司氏が就く。

 経営統合ではなく、自販機の新規設置といった営業活動は6社が従来通り独立して行い、オペレーションを一体化させることで6社の生産性を向上させてスケールメリットを生み出していく。
 「当面は当社独自のノウハウであるスマートオペレーションをアサヒさま傘下の子会社に導入していくことで自販機事業の収益性を高めていくことに注力する。オペレーションで6社のやることが変わるのではなく特に我々のノウハウを注入していきながらさらに進化させていく。単独でやる以上にスケールメリットをいかしながら進めていくため収益性が高まっていく」と説明する。

 スマートオペレーションとは、自販機をオンライン化し、自販機のルート設定や補充する商品の最適化を進め、各自販機に補充する飲料を事前に準備することで業務を効率化する取り組みとなる。

 これにより効率化と分業を推進し労働力不足の解消にもつなげる。
 「象徴的な話をすると、従前100ヵ所だったのが140ヵ所、150ヵ所の自販機を1人で回れるようになる。また、これまで割と若い男性の労働力に依拠するところがあったが分業により様々な方にも就労していただける」という。

 オペレーションの向上により将来的には自販機の売場としての魅力も高めていく。
 「ダイドーの中期経営計画において自販機の魅力を上げていこうとマスクや小腹満たしの食品を販売するなど飲料以外のサービスにもチャレンジしている。非飲料を提供するようなオペレーションの基盤構築に挑戦するプラットフォームが今回の一体的運営で1つできたところにも意義がある」と意欲をのぞかせる。

 当面は、相互販売の強化で両社の自販機の魅力を高めていく。

 これまで18年3月からアサヒの「三ツ矢サイダー」と「カルピスウォーター」をダイドーの自販機で販売し19年3月からダイドーの「ダイドーブレンド微糖 世界一のバリスタ」をアサヒの自販機で販売。
 今回新たに23年3月以降の取り組みとして、アサヒの「ウィルキンソンタンサン レモン」と「モンスターエナジー」の2品をダイドーの自販機で販売し、ダイドーの「ダイドーブレンド デミタス微糖」をアサヒの自販機で販売する。
 両社がそれぞれ行っているアサヒ・ダイドー以外のメーカーとの相互販売も従来通り継続していく。

 アサヒとしては主に製造面でダイドーに協力する。
 アサヒの米女太一社長は「ダイドーさんが自販機で技術を磨かれてきたのと同様に、当社は生産部門で技術を磨き、また投資も行って効率的な生産ができるようになっている」と胸を張る。

 包括的業務提携の内容は、直販事業の一体的運営、相互販売、製造受託、環境領域の協業の4つで構成。

 環境領域の協業について米女社長は「一番の課題は使用済みペットボトル(PET)の回収で、リサイクルボックスの使用済みPETを両社で効率的に回収し、回収ルートを可視化することで水平リサイクルを推進していく」と語る。

 なお自販機の設置台数はダイドーが27万台、アサヒが26万台。