アイルランド、日本市場に重点投資 使節団が来日 関係強化へアピール

アイルランド政府食糧庁(ボード・ビア)では日本市場向け3か年計画のスタートにあたり、農業・食料・海洋大臣のチャーリー・マッコナローグ大臣(写真左から2人目)がこのほど来日。日本との貿易関係強化に向けた政府会合に出席した。

同国の21年対日輸出総額は1・7億ユーロ(約240億円)。優先市場のひとつである日本は、アジアでも近年最も高い成長率を誇る。

日本向けに供給する主な品目の内訳は、乳製品95億円、豚肉57億円、水産物22億円など。なかでも牧草肥育牛肉(アイリッシュ グラスフェッドビーフ)は昨年も前年比76%増(38億円)と躍進が続く。

1日に会見したマッコナローグ氏は「日本とアイルランドには多くの類似点があり、食料への感謝の気持ちも共通している。また生産者、食品の安全性、サステナビリティが重視される点も似ている」として、アイルランドの産業界が主導する農業食品分野の成⻑戦略「フードビジョン2030」に基づき経済、社会、環境の観点から持続可能な農業を推進していることを紹介。「日本のみなさまとの関係をより強固にできることを光栄に思う」と述べた。

ボード・ビアのマイケル・マーフィーCEO(同3人目)によれば、19年に同庁の日本オフィスを開設して以来、同年発効した日EU経済連携協定の効果もあり、対日輸出額は34%増加した。マーフィー氏は「アイルランドは人口500万人の小さな国だが、2千500万人を養えるだけの農業生産量がある。アジアには非常に大きな可能性を感じており、輸出額は25年までに8億ユーロ増加の計画。日本のお客様のインサイトに訴えかけ、より安定的なビジネスを築きたい」とアピールした。

対日3か年計画では、同国が誇る世界的食品ブランドを紹介するほか、日本の顧客とのパートナーシップ構築、インサイトとイノベーションの活用、業界の人材育成などを進める。

今回の対日プロモーションには約2・7億円を投資。今月からスタートした日本でのキャンペーン第1弾では、今回の使節団の一環としてバイヤーや関係者向けのテクニカルセミナーを都内で開催。同国が生産する牛肉やラム肉、乳製品などに関する情報を提供する。

また伊勢丹新宿店では、牧草肥育牛肉の販売やレストランとのコラボ企画を実施。さらに国内最大級の料理人情報サイト「ヒトサラ」と「アイリッシュ グラスフェッドビーフ・レストランフェア」の第2弾も開催予定。東京のトップシェフ15人とともに、特別メニューを展開する。

この他にも同国では近年、対日投資を重点強化。東京・四谷に約29億円をかけて建設中の「アイルランド・ハウス」を拠点に、日本でのビジネス展開拡大を図る計画を進めている。ミホル・マーティン首相も7月に来日し、岸田総理と会談を行ったほか、建設現場を視察した。

今年は東京オフィスの人員も増員。ボード・ビアのジョー・ムーア氏(写真㊨)は「人員増強は、日本におけるアイルランド食品・飲料業界への投資に対する私たちの真剣なコミットメントを再確認するものだ。マーケット情報の提供やアイルランドのサプライヤーとのコミュニケーション促進によって、アイルランド産食品・飲料を手掛ける日本のお客様をさらに強力にサポートできるようになる。アイルランド政府食糧庁の日本市場に対する戦略は、日本への輸出を大幅に増加させるという目標を実現するためのロードマップを提供するものだ」と説明している。