9月1日の「防災の日」を基点とした防災週間が開幕。相次ぐ自然災害により防災意識は年々高まり、防災食品の需要も増えている。2021年度は東日本大震災から10年目の節目に当たり、店頭やECでの露出が増えた結果、防災食市場は2割近い伸びを達成した。今年上半期も堅調さを保っており、コロナ感染拡大による不安感の高まりも一因している。コロナ禍で2年連続して中止された自治体や企業主催の防災訓練が復活し、防災食認知のきっかけにもなりそうだ。
防災食は東日本大震災が発生した3月11日前後と、「防災の日」(9月1日)前後の二つのヤマがある。市区町村など自治体が災害時に避難所で提供する防災食は、防災卸や防災用品商社を通して販売され、大手民間企業や病院施設、高齢者施設、学校向けなどとともに安定した需要を保っている。
一方、シェアを伸ばしているのがスーパーやホームセンター、ディスカウントストア、ドラッグストアだ。従来は年2回のヤマ場に特設コーナーを開設する程度だったが、相次ぐ災害により防災食コーナーを常設する店も増えた。ディスカウントストアでは配荷スペースを広げ、アイテム数も増やしている。年間2回だけだがコンビニもレジ横に防災食を並べる店があり、防災食の認知が広がった。
ECチャネルは今年も拡大する一方で、地震や大雨のたびに需要が膨らむ。また、災害時の供給拠点としてキッチンカーが注目されている。避難生活が長期化すると温かい適温食の提供が求められ、市区町村がキッチンカーと連携して温かい食事を提供するケースも増えている。
防災食の中身は賞味期限の長さをコンセプトにした備蓄商品と、ローリングストック向けの一般食品に大別される。アルファ米やミネラルウォーター、缶詰、ラーメン、パックごはん、レトルトカレー、パン類などが定番だが、尾西食品が今年から発売するアルファ米と汁物をセットにした「一汁ご膳」ブランドの「けんちん汁と白飯のセット」「豚汁と白飯のセット」やカゴメのプラントベースのカレーなど、普段の味わいを訴求した商品やヴィーガンなど特定層をターゲットにした商品も登場。さらにはノンアレルギー食品やハラール食品、高齢者向けの嚥下食品などの開発も進められ、多様化の様相を強めている。