パックごはん 消費変化でチャンス到来 「米飯回帰」期待の秋商戦

コロナ禍を経た生活スタイルや生活者意識の変容から、さまざまな食品で消費動向が変化した。追い風を受けて市場が拡大した品目の一つが、パックごはんだ。巣ごもり生活で初めて利用して良さに気づき、その後の食生活にも定着する流れがうかがえる。小麦高騰による「米飯回帰」の機運も加わり、好循環の加速へ絶好のチャンス到来だ。

東日本大震災後の備蓄需要の高まりをきっかけに、利用価値の見直しが進んだパックごはん。この10年余りで市場はほぼ倍増という急成長を遂げた。

コロナ禍の初期には、巣ごもり生活のためのまとめ買いが急増。一時は特需が発生し、20年の生産量は106.7%と躍進した(農水省「食品産業動態調査」)。翌年には反動が表れるかに思われたが、21年も105.4%と続伸。一時的なブームにとどまらない利用拡大をうかがわせた。

これを裏付けるデータもある。米穀安定供給確保支援機構が今年4月に実施したインターネットによる消費者調査(首都圏在住20~60代男女518人)では、回答者の約3割が新型コロナ感染拡大の影響によりパックごはんの購入量が「増えた」と答え、「減った」との回答を2倍近く上回った。「今後購入量を増やしたい」とする人も3割近くいた。

また1回当たりの購入食数は、マルチパック製品の主流である「3食」が約4割を占め最多。購入理由(複数回答)としては「すぐに食べることができるから」「長期保存できるから」を挙げた人がそれぞれ半数超。必要時だけの単発的な利用よりも、常備食として家庭でストックするために購入するケースが増えていることが想定される。こうした変化に対応し、5~10食入りの多食パックを投入する動きが昨年から活発化している。

ただ、主原料の国産米が値下がり傾向にあるパックごはんも、包材価格高騰やエネルギーコスト上昇の影響は免れず、一部では値上げも行われた。それでも業界では、小麦価格の高騰を背景とした「米飯回帰」の好機をつかもうと躍起だ。市場の9割を占める白飯だけでなく、おこわ、赤飯など、より高い成長率をみせる味付けごはんのバラエティーを拡大する動きも相次ぐ。この秋、売場はますます活気づきそうだ。

包装米飯生産量(2012-2021) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)