「インスタントコーヒーだと思って買ったらレギュラーコーヒーだった」 なぜ起こる?コーヒー誤購入 小さな声に大手3社が対応

 インスタントコーヒーだと思ってレギュラーコーヒーを購入してしまうコーヒー誤購入に関する問い合わせが年に数件の頻度でお客様センターに寄せられているという。

 レアケースではあるものの、大手コーヒーメーカーはこの声に対応してレギュラーコーヒーのパッケージに「インスタントコーヒーではありません」の文言を入れるなど誤購入防止に取り組んでいる。

 なぜ誤購入は起こるのか。

 主な要因としては、瓶が主流だったインスタントコーヒーで詰め替えニーズに対応した袋入り商品が登場したことにある。

 2002年に袋入りの市場を切り開いた味の素AGF社は「インスタントコーヒー袋入りタイプの販売数量が伸びるにつれて、レギュラーコーヒー袋入り商品に対してお客様から“インスタントコーヒーだと思い購入した”というお声をいただくようになった」と振り返る。

左から売場に並ぶ「ちょっと贅沢な珈琲店」(味の素AGF社)「グランドテイスト」(キーコーヒー) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
左から売場に並ぶ「ちょっと贅沢な珈琲店」(味の素AGF社)「グランドテイスト」(キーコーヒー)

 このようなユーザの声に対応すべくAGFは当初、レギュラーコーヒー商品に「豆を挽いたもの レギュラーコーヒー」などと表記していたが、2017年秋季商品から「インスタントコーヒーではありません」とダイレクトに訴求を始めた。

 「文字で表示するだけではなくアイコン化することで、お客様により気づいてもらえるように工夫し、配置についても店頭のプライスレールで隠れてしまわないように上部に表示するようにした」という。

 19年秋冬商品以降は、より分かりやすくするためレギュラーコーヒー袋入り商品の表示のフォントを明朝体からユニバーサルデザインフォントに変更。インスタントコーヒー袋入り商品もデザインを大幅に変更した。

 「具体的にはインスタントコーヒー袋入り商品の背景色を白色に変更することでレギュラーコーヒー袋入り商品との差別化を行った。加えて、インスタントコーヒーパウダーの画像を前面に大きく露出することでインスタントコーヒーであることを想起していただくようにした」。

 キーコーヒーとUCC上島珈琲も誤購入防止対策に取り組んでいる。

 キーコーヒーでは、数年前から表示に工夫を施していたが、依然として年に数件ほど“お湯を入れたが粒が残って溶けない”“お湯に溶かして飲むとカップに粉が残る”といった誤購入の問い合わせがあることから、同社ではこれを氷山の一角の可能性があると捉え、今年からレギュラーコーヒー袋入り商品に誤購入防止マークを導入している。

 誤購入防止マークは、インスタントコーヒーではないことと器具が必要であることを注視喚起するデザインに仕立てられている。

 最近の誤購入の要因について、キーコーヒーではインスタント袋入り商品の大袋化を挙げる。

 「瓶容器から袋へのシフトもあり、従来は90gだったのが130gや160gなど大きさでも似通うようになった。その点、当社の『グランドテイスト』のインスタントコーヒーは比較的大きく、並べられ方次第では間違えられる可能性がある」(キーコーヒー)と説明する。

「ゴールドスペシャル」(UCC上島珈琲) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「ゴールドスペシャル」(UCC上島珈琲)

 UCCは、21年9月のリニューアル時から「ゴールドスペシャル」の粉タイプに、21年11月上旬から「職人の珈琲」の粉タイプにそれぞれ“インスタントコーヒーではありません”の表記をパッケージにデザインしている。

 3社で共通するのは、お客様センターがマーケティングや品質管理など他部署と連携し顧客の声やニーズを商品に反映させやすい環境を整えている点にある。

 UCCは「“レギュラーコーヒーの粉製品をインスタントコーヒーと誤認しやすい”というお客様の声を受け、誤認を防ぐアイコンを追加した」とし、「上島珈琲店」シリーズなどパッケージ表面積の小さい商品に関しては裏側面に“インスタントコーヒーではありませんので、お湯には溶けません”の文言を入れている。

 キーコーヒーでは、お客様センターに寄せられた声は社内の情報管理データベースに登録され社内に共有される。
「対応結果を残すことで、お客様からいただいた貴重な情報は関係部門から経営トップまで速やかに共有され迅速かつ適切な対応を心がけている」と述べる。

 AGFも「安心品質No.1」の取組みとして顧客の声に耳を傾ける体制を整えている。
 「AGFグループはお客様の声に真摯に耳をかたむけ商品設計からお客様の手に商品が届くまでのバリューチェーン全体にわたり安心品質No.1を徹底して追求している。この取組みを継続することでAGF商品のファンのお客様には安心してご購入いただき、また新たなお客様にはAGF商品のファンになっていただくことを目指している」と語る。