競合の飲料メーカーがまねできない伊藤園のユニークさとは? それを磨き圧倒的No.1ティーカンパニー目指す 新中計を発表

 伊藤園は、競合の飲料メーカーがまねできないユニークさを磨き、国内で圧倒的No.1ティーカンパニーの地位確立を目指す。

 ユニークさとは、茶産地育成事業を展開し、伝統と先端技術を取り入れながら安定的な原料調達と持続的な茶農業活性化の両立に取り組んでいる点。
売場ではリーフ(茶葉)とドリンク(飲料)の総合提案が唯一無二の展開であるとし、これに磨きをかける。

 特に主力ブランドの「お~いお茶」では、リーフの価値を高めることで、その価値をドリンクに付与していく。

 2日、決算発表会で本庄大介社長は「前期(4月期)はリーフの店頭での販売が創業以来過去最高の金額になった。リーフの強化=『お~いお茶』の強化だと思っており、ここをさらに強化して“日本一のお茶屋”のプレゼンスを高めていく。これにより“日本一のお茶屋がつくるお茶のドリンクも日本一”というイメージを醸成していく」と意欲をのぞかせる。

伊藤園の本庄大介社長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
伊藤園の本庄大介社長

 海外展開では、米国と中国を二大市場と位置づけ「お~いお茶」のグローバル化を推進していく。

 「日本の食文化ともいえる、日本の緑茶を海外で広めていく。あらゆる国でこの緑色のボトルを目にしてもらえるようにしたい。これまで手薄だった欧州・アフリカ・中東の未進出エリアでも少しやっていく。その際は現地の有力な販売代理店と組み、まずは商品を流通させることからスタートしたい」との考えを明らかにする。

 既存の展開エリアでは健康志向の高まりで無糖茶が浸透する東南アジアも有望視。

 「売上規模は小さいが、タイやインドネシアはコロナ禍でも堅調に推移し前期は微増収増益となった。無糖茶が広がっており、特にアジアは所得が増えるにつれて健康意識が高まっているように思える」とみている。

 海外展開に立ちはだかる直近の課題は、輸送費の高騰となる。

 海外グループの前期実績は収益認識基準適用で、売上高が18.6%増の419億2700万円、営業利益が21%減の14億7200万円となった。

 「前期は北米と中国に注力し、北米では値上げが受け入れられて商品も回転したものの、海上運賃の高騰と港湾の大混乱でコストがかさみ2ケタ増収で減益となった。中国は競争が激化したことに加えて上海のロックダウンで我々のオフィスも立ち入り禁止になりリスタートとなる。今期中どこまで回復するかみていかないといけない」と語る。

 輸送費の高騰を受けて、米国では現地生産を視野に入れる。

 これについて平田篤取締役専務執行役員は「海上運賃が常識外に上がっており、米国では現地生産を選択肢の1つとして検討は進めている。運賃が下がる可能性もあり投資のタイミングをみつつ、すぐにスタートできるよう準備だけは整えている」と説明する。

 伊藤園は今期、2027年4月期までの新・中期経営計画の初年度を迎える。

 新・中計ではグローバル・価値創造・ユニークの3つの柱を新たに設定し、27年4月期までに営業利益率を前期4.7%から7%、海外売上比率を前期10%から12%以上に引き上げることを公表した。

 ただし売上高・営業利益などの連結目標は非公表。10月1日の「お~いお茶」「健康ミネラルむぎ茶」「タリーズコーヒー」など主力商品の値上げの影響など今期の状況を見定めてから来期をめどに開示する。

 「我々の値上げがどれくらい浸透するのかということと、我々が受け入れる値上げとして包材・加工賃・輸送費などのコストを見極めるのに時間がかかる」(本庄社長)という。

 なお伊藤園の前期連結業績は旧基準で売上高3.4%増の4613億1600万円、営業利益12%増の186億7200万円、経常利益16.6%増。
収益認識基準適用では、売上高4007億6900万円、営業利益12.7%増187億9400万円、経常利益17.3%増の199億円7100万円。