ノンアルなのにエールビールの味わいそのまま 減圧蒸留法で実現 ベルギーから輸入販売

湘南貿易(神奈川県横浜市)が21年1月から輸入販売しているベルギー産のノンアルコールビール「ビア・デザミー0.0%」が好評を博している。

「ビア・デザミー0.0%」は、ベルギーの老舗飲料メーカー・ネオブュル社が減圧蒸留法で本格的ベルギービールのアルコールだけを除去。オレンジピールのさわやかな香りやクリーミーで繊細な泡立ちといったベルギーの伝統エールビールの味わいをそのままに、ノンアルコール化(アルコール0.0%)を実現している。

取材に応じた金髙由紀子マーケティング室室長は「昨年1月に販売したところ3月には初回入荷分が完売した。そもそもベルギー伝統のブロンドエールビール自体の評価が高く、その味わいを全く損なっていない点が画期的で、普段ビールを飲まれない女性にも飲まれている」と説明する。

330㎖瓶の容器も特徴で、インスタグラムをはじめとするSNSで話題化も図れているという。

オープン価格で、小売の想定売価は500円程度。販売状況は「ECではケース(1ケース24本入り)と6本セットの販売を展開し、1本500円程度と高単価にもかかわらず強い引き合いをいただいている」と上々だ。

プロのお眼鏡にも適い「展示会に出展するたびにビールの専門家が商品サンプルを持っていかれる現象が起こっており、数あるノンアルコールビールの中で差別化が図れていると手応えを感じている」という。

差別化の背景には、ネオブュル社が長年培った独自技術がある。ネオブュル社は創業120年以上の歴史を持ち、フルーツ飲料、シードルやノンアルコールワインなど炭酸飲料を中心に幅広い飲料を手がけている。

減圧蒸留法は、減圧することで40℃以下の低温で蒸留し、ワインやビールなどのアルコール飲料本来の風味を保ったままノンアルコール化する技術で、「設備投資費が高額なほか、機械を扱うのに特別なスキルを要する」と述べる。

ノンアルコールスパークリングワイン「ブリュット」(湘南貿易) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
ノンアルコールスパークリングワイン「ブリュット」(湘南貿易)

ネオブュル社はベルギービールに先立ちワインとシードルをノンアルコール化。湘南貿易では2009年から日本市場限定にローカライズされたノンアルコールスパークリングワインの「デュク ドゥ モンターニュ」シリーズと世界共通のノンアルコールワインの「ヴィンテンス」シリーズの販売を手掛けている。

それらノンアルコールワイン商品の売れ行きはコロナ禍で急伸。前期(12月期)は倍増となった。その一因には定着化を挙げる。

「飲食店さまのお話では、緊急事態宣言などでノンアルしか提供できないときに飲まれたお客様が宣言解除後もノンアルを選ばれ定着化してきている」という。

加えて欧米の若者の間で広まる、あえてお酒を飲まないことを選択する健康的なライフスタイル「ソバーキュリアス文化」の影響も指摘する。「健康上の理由で、あえてノンアルを選ぶ人が増えている。翌日や飲用後の仕事のために控える動きや、食事の楽しみを『酔い』で奪われたくないニーズが出始めている。我慢してという発想ではなく、積極的にノンアルを選ぶ動きが広まっている」との見方を示す。

今期のワイン事業部の方針は「ビア・デザミー0.0%」のブランド認知拡大に注力する。ノンアルワインも手を緩めず、今年2月には新商品としてノンアルコールスパークリングワインの「デュク ドゥ モンターニュブリュット」とノンアルコールワインの「ヴィンテンス オリジン」シリーズを発売した。