食品パッケージを製造する富士特殊紙業の22年9月期売上は、前年を若干下回る水準で上期(21年10月~22年3月)を折り返した。「コロナの長期化で内食需要が継続。また昨年来、包材原料の需給逼迫が先需を促していることもあり、受注は昨対を上回る状況。ただ、それに対してわれわれが応えきれていない」と同社・杉山真一郎社長。
設備面に関してはトータル約20億円を投資し、本社工場と筑波工場の再整備を実施。作業効率の向上と生産能力の増強を進めてきた。人手不足は課題としてなお残るが、作業の効率化やロス削減などでは期待通りの成果を見せ始めている。
しかし一方で、包材原料価格の高騰と調達危機は、より深刻度を増している。昨年10月、接着溶剤として使用する酢酸エチルがショート寸前までいった。OPPフィルムやアルミ箔なども世界的な需要増で価格が上昇、納期も不安定だ。
ありとあらゆるモノの価格が上がる中、食品包装業界においても価格改定の動きは待ったなしの状況にあるが、「食品は生活に密着しており、タイムリーな価格転嫁が難しい。ただし、食品パッケージは社会的インフラ度が高い分野。過去経験のない値上がり幅により危機に直面している業界事情をぜひとも汲んでいただきたい」(杉山社長、以下同)とする。
二酸化炭素(CO2)排出量やプラスチック使用量の削減といった、企業の環境取り組みに対する社会の関心も高まっている。同社では98年、業界に先駆けて水性グラビアインキを実用化。従来の油性グラビアインキから水を多く含む水性グラビアインキに転換することで、印刷工程におけるCO2排出量削減や、揮発性有機化合物(VOC)の使用量、排出量の大幅削減を実現。環境経営に熱心な企業を中心に年々採用を広げている。
食品包装においては近年、バイオマス素材への注目度が高まっているが、同社でもユーザーの声に応え、バイオマス素材や紙素材などと水性グラビア印刷を組み合わせた提案を用意する。
ただ、「印刷における脱炭素やCO2排出量削減効果としては、当社の水性印刷が圧倒的な優位性を誇る。なにより昨今の状況からして、高コストのバイオマス素材やリサイクル素材などが相応の環境保全効果を発揮しうるのかということ。当社試算ではバイオマスフィルムやリサイクルフィルムを使って油性印刷を行うよりも、一般的なフィルムで水性印刷にした方がCO2の削減効果が高かった」という。
今年は東洋インキと共同開発した、軟包装向けでは世界初となる「水性バイオマス印刷」の実用化を図っていくとともに、「無溶剤型パッケージ」や、単一素材でリサイクルしやすい「モノマテリアルパッケージ」など、さまざまな視点から環境課題解決に向けた製品開発を推進。今秋、東京ビッグサイトで開催される「TOKYO PACK2022」(10月12~14日)でも、環境対応とコスト対応の両立を目指した製品提案に力点を置く。
「当社や業界を取り巻く環境も大きく変化した。会長が構築してきた「パッケージワールド」から、私の代の『パッケージワールド』構築へと、フジトクの進化を図っていきたい」