紙コップではなくマイボトル(ステンレス製魔法びん)にマシンからコーヒーが注がれる――。
4月18日、循環型社会と快適なオフィス環境の実現に向けてコーヒーマシン・マイボトル・自動洗浄機を組み合わせた共同実証実験が開始された。
参加企業は、東京建物・サーモス・パナソニック・アペックス・味の素AGF社の5社。
実験場所は東京建物の本社ビル7階(東京都中央区)。
7階に勤務する社員約300人にサーモスのマイボトルを配布し、約1ヵ月間、アペックスのコーヒーマシンとパナソニックの自動洗浄機を利用してもらい、社員の環境意識の向上など一定の効果がみられれば展開規模を拡大していく。
東京建物ではこれまで福利厚生で水とコーヒーを紙コップで提供。実験では紙コップを廃止し1日約162杯分の削減を見込む。
実験目的について、4月18日、共同説明会で冒頭発表した東京建物の阿部里紗子ビルマネジメント第一部主任は「紙コップも使い捨て容器のため環境によいとはいえない。廃棄物の廃棄量を削減することで循環型社会を推進するとともに、上質なリフレッシュタイムを提供することでコミュニケーションが生まれやすい空間づくりを行っていく」と説明する。
東京建物は、オフィスビルや商業施設の開発・賃貸・管理などを手掛けていることから「オフィスビルを提供する立場としてまずは我々が一番快適なオフィスを検証し、実験結果を踏まえて、将来的にはオフィスビルに入居する企業様への支援を行っていく」。
実験では社員の意識の変化を重視。「社員の環境に対する意識がどれくらい変わるのかに一番注目している」という。
マイボトルで浮上する課題は洗浄。サーモスの簑島久男社長室ブランド戦略課マネジャーは「マイボトル自体、洗浄しやすい設計を追求しているが、洗浄する場所や手段までには及ばない」と語る。
この課題に対応すべく導入された自動洗浄機は2種類で、1つは執務室内に置かれる高速ボトル洗浄機で、フタを外して飲むタイプのマイボトルに対応。新開発ノズルによる高圧水流と高温水が1回約1分でボトル内部とフタを同時洗浄する。
もう1つが市販の卓上洗浄機を改良した卓上型ボトル洗浄機で、給湯室内に設置されワンタッチオープンのマイボトルに対応。最大14本のボトルを同時に洗浄・乾燥し、洗浄後は「ナノイーX」で清潔に保管される。
これら自動洗浄機について、パナソニックの金志雄くらし事業本部くらしアプライアンス社キッチン空間事業部冷蔵庫・食洗器BU商品企画部ソリューション企画課長は「一般的な手洗いに比べるとかなり節水できる。電気使用量も家庭用の卓上洗浄機と比べて少なくて済む」と胸を張る。
マイボトル対応のため、コーヒーの量はコンビニコーヒー約2杯分に相当する320mlにも対応。
これにより「挽きたてのおいしいコーヒーを提供することで、1日1杯飲まれていたお客様が2、3杯飲んでいただける可能性がある。紙コップよりも量は多くなり、オフィスからご自宅へのお持ち帰り需要も見込める」と期待を寄せるのはアペックスの野本匠身事業統括本部営業企画部長。
アペックスの新型コーヒーマシン「CS‐3」は、4つの原料収納箱があり、箱ごとにミルを計4つ搭載し使用するコーヒー豆や茶葉などの原料ごとに挽き方を変えることができるのが特徴。
加えて抽出機を2つ搭載することで「タンブラーのような大容量の場合は、抽出機を2台同時に動かし時間短縮での抽出を可能とした」。
そのほか設置しやすさも特徴で、水道直結とタンクでの給水の両方に対応し100Vの電源があれば設置できるようになっている。
コーヒーは、アペックスと味の素AGF社が共同開発した「ザ・ブレンド」と称するブレンドを提供。アペックスの紅茶・烏龍茶もラインアップする。
「ザ・ブレンド」は、コロンビア・グアテマラ・ブラジル・タンザニアをブレンドし、AGF独自の「T2ACMI(たくみ)焙煎」で焙煎。
「毎日飲んでも、一日に何杯飲んでも飲み飽きない味を目指し細部までこだわった」と味の素AGF社の畑谷顕久業務用支社営業企画グループグループ長代理は自信をのぞかせる。