日清食品ホールディングスと東京大学大学院情報理工学系研究科竹内昌治教授の研究グループはこのほど、「食べられる培養肉」の作製に日本で初めて成功。肉本来の味や食感を持つ「培養ステーキ肉」の実用化に向けて大きく前進した。
「培養肉」とは畜肉の細胞を体外で組織培養することによって得られた肉。家畜を飼育するのと比べ地球環境に与える負荷が低いほか、畜産のように広い土地を必要とせず、さらには厳密な衛生管理が可能になるという利点があることから、食肉の新たな選択肢の一つとして期待されている。
「食べられる培養肉」の作製には「食用可能な素材のみを使用すること」「研究過程において食べられる制度を整えること」という2つの大きな課題があり、これまでの「培養肉」は牛肉由来の筋細胞と食用ではない研究用素材で作製していた。
今回、日清食品ホールディングスと竹内教授の研究グループは、独自に開発した「食用血清」と「食用血漿ゲル」(いずれも特許出願中)を使用することで、食用可能な素材のみの「培養肉」作製にこぎ着けた形だ。研究成果は3月17日、「第21回日本再生医療学会総会」で発表された。
こうした成果をもとに、日清食品ホールディングスが「食の安全」に関する知見を生かして構築した「培養肉」を食べるまでのプロセスについても、東京大学の倫理審査専門委員会から承認されている。
「素材」と「制度」という2つの課題をクリアしたことにより、産学連携の「培養肉」研究において日本で初めて「食べられる培養肉」を作製。3月29日に研究関係者による試食も行われた。