かまいたちのネタに思う

かまいたちの漫才で「となりのトトロをまだ観たことがない」ことを特技として自慢する笑いがある。トトロはスタジオジブリの代表的作品として日テレ系では隔年で17回も放送され、その度に高視聴率を獲得する国民的映画。再放送の網をすり抜けて観てないんや、のくだりで笑わされた。

▼笑って思い出したが、初めて観たオペラは「魔笛」だった。観たいと思い立って10年待った。敢えてそうしたのは日本文化研究で知られたドナルドキーン氏の影響だ。「魔笛」を聴いたことがない人にキーン氏が「あなたの人生にそんな楽しみが残されてるなんて羨ましい」と呟くエピソードを知ったからだ。

▼音楽の造詣もなかった単純な筆者は「とにかく魔笛は最高の音楽なんだ」と「楽しみを残す」ことを刷り込まれ固執してしまったようだ。確かに「魔笛」は最高の音楽だった。一つたりとも無駄な音符がない。けれども、一番大切な時に封印を解いて味わう楽しみは悪くないが、何度聴いてもその度に楽しめる。素晴らしい芸術はなるべく早く経験した方が良い。額面通りに受け取ってしまった愚かさをいまだに悔やまれる。

▼早い遅いの選択は個人の考えによるが、他方、早かろうが遅かろうが経験してはいけない、他者に経験させてもいけないことはある。最たるものは今東欧で行われている出来事だ。