サントリー食品、営業利益が過去最高 原料高騰と世界的な物流混乱でも達成できたワケ

サントリー食品インターナショナルが14日発表した2021年12月期決算は、営業利益が前年比23.3%増の1千186億円と、過去最高となった。これには、日本・欧州・アジア・豪州・米州の全リージョンでコアブランドの活動に注力し主要市場でシェア拡大したことに加えて、世界的なサプライチェーンの混乱と下半期以降に原材料価格高騰の影響が顕在化した中、コストマネジメントの徹底で利益への悪影響を低減させたことが貢献した。

コストマネジメントについて、この日、決算説明会に臨んだ齋藤和弘社長は「石油などの原材料価格高騰はある程度予測でき、上がることを前提に作戦を組んでいった。比較的難しかったのは物流で、北米においては人件費の高騰で人手不足が局所的に起こり、これは予測できなかったことで大変だった」と説明する。

トラックドライバーについては人手不足が顕在化した後に長期契約を提案するなどして対応。原材料価格高騰に対しては、予測に基づく対策など企業努力で吸収できない部分は海外の一部で価格改定を行った。

日本での価格改定については「真剣に検討している。業界のリーダーの動きもあり全体的に勘案しながら対応していきたい」と語る。その検討に当たっては、飲料が持つ生活必需品の要素を考慮する。

日本を統括する木村穣介取締役副社長は「特に国内の清涼飲料水は、水・お茶カテゴリーを中心にお客様にとって生活必需品という側面もあるため、コストアップしてもできる限りこの影響を吸収して最大限努力するのがメーカーの責務。一方、自助努力の限界を超えていると判断した場合は一部をご負担いただく。この両面を予断なく適切な方向で対応していく」と説明する。

23年までの3か年中期経営計画初年度に当たる21年は、売上収益・営業利益・営業利益率ともに計画を上回る進捗となった。特に営業利益率は、コストマネジメントに加えて、センターオブエクセレンスや構造改革に取り組んだことが大きく寄与した。

センターオブエクセレンスの主要拠点は、アジア・オセアニアの組織を統合して21年1月に新設されたアジアパシフィックリージョン(APAC)。

APACに「日本にあった各ファンクションの本部を移管」(齋藤社長)。ヒト・モノ・ノウハウを消費者に一番近い現場に送り込み市場変化に対応して即断即応できる体制を構築した。

センターオブエクセレンスは、世界各拠点の持つノウハウと知恵を全世界横断で展開するための基盤を作るもので、ここで共有化される知見は、コアブランドで行われるイノベーション技術、収益を伴った売上成長戦略(RGM)、営業・流通戦略――の主に三つ。

これにAIによる需要予測・オペレーションの効率化・高度データ分析のデータ・デジタルソリューション(DX)の推進を組み合わせて共有化している。

コアブランドイノベーションの成果としては21年に過去最高の販売数量を達成した日本の「サントリー天然水」と「伊右衛門」、フランスの「Oasis」などを挙げる。

この中で「Oasis」については「現地と日本チームがクロスリージョンで取り組むことで大きな成果につなげることができた」とし「今後もこうした取り組みを加速させグローバルでのコアブランド育成に取り組んでいく」と意欲をのぞかせる。

構造改革は、日本の自販機事業で数年来の改革の成果として21年に大きなコスト削減が増益に寄与。

今年1月に、新たに直販事業を担うサントリービバレッジソリューション(SBS)を設立し、SBSのもと商品・サービスを通じた新しい価値の提供を加速させ、AIの活用なども進化させて自販機事業を成長軌道に乗せる。

欧州業務用ビジネスは、新規需要の獲得とコロナ影響による消費者の行動変化に合わせた販売ルートの刷新に着手する。

欧州と米州は21年、業務用市場の回復が本格化して大幅な増益となった。

なお21年の全社売上収益は7.7%増の1兆2千689億円となり、22年に過去最高の売上収益・営業利益の達成を目指す。