広がる冷凍パン コロナ禍で家庭用へシフト ロス削減と客単価増に期待

コロナ禍で冷凍食品の市場は広がり、量販店の売場も拡大傾向にある。こうした中、新たなカテゴリーの一つとして注目されるのがパンだ。従来、冷凍のパンはホテルやレストランなど業務用向けが主だったが、コロナ禍でこうしたチャネルにおける需要が縮小し、メーカーは家庭用の強化を図っている。もともとベーカリーはロスの多いカテゴリーであり、販売店にとっては冷凍の扱いを強化しロスが削減できればコストダウンが図られるだけでなく、サステナブルな企業姿勢をアピールすることにもつながる。

業務用向けに冷凍パンを製造販売するスタイルブレッド(群馬県桐生市)は、自家製の酵母や独自製法で作る商品が好評を得て、全国約3千のホテルやレストラン、約400の保育園に導入されている。

コロナ禍で業務用向けが厳しくなった一昨年の秋に、市販用の商品を発売。「冷凍だからこそ、家庭で焼き立ての美味しいパンが食べられる」(セールスグループ)とアピールしながら導入を増やし、現在は全国の主要チェーン約1千店舗に広がった。「もっと多くの店にコーナーを構えてもらい、冷凍パンの市場を作っていきたい」と意気込む。

敷島製パンも業務用を中心に、焼成後冷凍製品を展開。ホテルやレストランの需要が減少する中、昨春から市販用の販売に本腰を入れ始めた。「トースターを持たない人はいるが、電子レンジはどこの家庭にもある」(西日本冷食部)とレンジアップで食べられるバゲットなどをそろえる。

もう一つ、注力するのがスイーツ系のパン。昨年秋に発売したホイップクリームのフローズンメロンパンが好評だったことを受け、この春は新たに「フローズンPanスイーツ」としてホイップを使った冷凍パンのシリーズを投入。解凍することなく、そのままでも食べられる。

山崎製パンも昨年、冷凍のマリトッツォを発売。「チルドに比べコクがあり、凍らせたままアイスとしても食べられる」(広域流通関西営業部)。関東から先行販売し今年は関西へも広げていきたい考えだ。

日本アクセスはクロワッサンとマフィンを合わせた「クロフィン」を留型の新製品として発売する。フローズン食品MD部では「参入メーカーが増え、冷凍パンの認知度は高まっている。最初は売れるのかという懸念も聞かれたが、最近は得意先の方からやってみようという声を多くいただく。スイーツ的な商品も増えており、アイスクリームとは別の新たなカテゴリーとして確立されつつある」と説明する。

液体凍結機を使った冷食ブランド「凍眠市場」を展開する伊藤忠食品も精肉や鮮魚などの生鮮に加え、新たに冷凍パンの強化を図る考えだ。

このように市場を広げている冷凍パンだが、通常のパンに比べると価格は高めだ。現在の原料高や配送コストを踏まえると、普及しても価格が下がるとは考えにくいという指摘もある。

一方で、量販店の客数が伸び悩む中、客単価アップにつながる商材の一つとしても期待される。そのためには冷凍であることの価値をいかに訴求し、広げていくかが課題となるだろう。