キリンビバレッジは昨年足踏みした基盤ブランドの「午後の紅茶」と「生茶」の立て直しを図り、そこで得られた収益を将来の成長の柱と位置付けるヘルスサイエンス領域に投資をしていくことで持続的成長を図っていく。
20日、事業方針発表会で吉村透留社長は「ヘルスサイエンス領域は今後のキリンビバレッジ成長戦略の幹となる事業。まずは“免疫ケアと言えばKIRIN”と言われる状態を目指す」と意欲をのぞかせる。
キリングループの独自素材「プラズマ乳酸菌」を「iMUSE(イミューズ)」ブランドや基盤ブランドの飲料などに活用するとともに、新たに朝の健康習慣ニーズを獲得すべくドリンクヨーグルトなどの“健康ワンショット市場”に100mlペットボトル(PET)飲料で本格参入する。
その第一弾として、3月29日から「プラズマ乳酸菌」1000億個配合した「iMUSE朝の免疫ケア」(100mlPET)を全国の量販・ドラッグストア・コンビニで発売する。
同商品は委託製造され、昨年12月に首都圏のコンビニ限定で発売開始。拡売に伴う今後の需要増に備えて、湘南工場(神奈川県高座郡寒川町)に約100億円を投じて100mlPETの製造を内製化し供給能力を拡大する。
100mlPETの製造を可能とする新ラインは23年3月に稼働予定で、これにより湘南工場全体の年間生産能力は現行の約1割増となる約4000万ケースへ引き上げられる。
そのほか、キリングループ素材を活用したシニア層への課題解決提案やファンケルとのシナジーによる新たな価値創出にも挑む。
キリンビバレッジの22年飲料トータルの販売目標は前年比2%増の2億950万ケース。このうちヘルスサイエンス領域は全体の1割強を占める2320万ケース(前年比14%増)を目標に掲げる。
同社の健康飲料は、無糖や微糖の“摂りすぎない健康”と「プラズマ乳酸菌」や機能性表示食品などの“プラスの健康”に大別され、ヘルスサイエンス領域は“プラスの健康”の商品群に相当する。
「ヘルスサイエンス領域の比率は現在1割強だが、27年頃までには少なくとも2割にはもっていきたい」と述べる。
一方、ヘルスサイエンス領域の源泉となる基盤ブランドは、販売数量を追い求める“箱数主義”と一線を画してCSV経営を推し進め「午後の紅茶」と「生茶」の再成長と収益強化に取り組む。
数量と利益のバランスについて吉村社長は「数量を追うがために利益率の低いブランドや商品に投資するのは避けたい。様々なコストダウンの効果もいずれ限界がくる。そうすると数量ではなく、販売額・トップラインを上げていくしかない。価格の戦いにならないような商品開発・マーケティング・ブランディングに注力していく」と語る。