茨城県を中心に北関東・千葉・埼玉・東京に187店舗のスーパーを展開するカスミは、味の素AGF社・茨城県との協働でいばらきエコチャレンジの推進をしている。
取材に応じたカスミの伊神里美さんはSDGs推進の旗振り役で「カスミがSDGsで一番重視しているのが“住み続けられるまちづくり”。その中で環境については住民の皆様やパートナーシップとの合わせ技でやらないといけない」と語る。
地域住民との合わせ技の好例は、全店舗に設置されるリサイクルステーション。
これは牛乳パックやアルミ缶・スチール缶、食品トレイ、ペットボトル(PET)などを分別回収するもので「2000年頃から入り口に設置して店頭の前面に押し出すようにしたことが奏功してお客様の環境意識は高く、PETボトルは当社販売量の2分の1に相当する1578tを回収。この量は量販店の中ではトップクラスと自負している」。
カスミはレジ袋削減の先導企業としても知られる。
20年7月にレジ袋有料義務化がスタートしたが、カスミは既に2004年に「FOOD OFF ストッカー」全店舗でレジ袋無料配布を中止し、09年に茨城県内全店舗で有料化に踏み切る。
「1974年からお買い物袋持参運動を展開し、最初にレジ袋有料化を進めた企業とも言われている。削減枚数は10年に1億枚を突破し、現在、年間1億2000枚の削減枚数・辞退率85%強で推移している」と説明する。
こうした中、分別されずゴミとして出されがちなグロサリー商品のセロハンなどのプラごみの扱いが課題となる。
伊神さんは「プラごみはサーマルリサイクルで役に立っても、焼却によりCO2が排出されてしまう。PETはリサイクルが確立されつつあるが石油由来原料のため、他の素材に置き換えられるのであれば極力使わないにこしたことはない」と述べる。
この考えのもと実現したのが、味の素AGF社が2021年2月に新発売した1L用のスティック入りパウダー飲料「ブレンディ」ザリットルを用いた店頭棚での啓発活動。
「ブレンディ」ザリットルは、大型PET入りのお茶やコーヒーを持ち運ぶのは重たくてストックするにも場所を取ることから、その解決に向け、買いやすさや使い勝手のよさに主眼を置いて開発され、エコ設計にもなっているのが特徴。
スティックの包材の一部に紙素材を使用し大容量PETに比べてプラスチック使用量が94%削減できることと、輸送効率が大幅に改善されて運搬車のCO2排出削減につながることから、行政・流通を巻き込んで協力の輪が広がっている。
カスミでは21年12月1日から年末にかけて「ブレンディ」ザリットルとともにポスターやボードを掲示して身近な商品がCO2削減につながることと、茨城県が推進する「いばらきエコチャレンジ」の周知を図っている。
「1つのメーカーさまがやられることで業界の意識が変わるのを期待している。『ブレンディ』ザリットルは生活習慣を見直して地球にやさしくという切り口なのでSDGsの意識が高まっている中でいい提案だと思っている」と期待を寄せる。
「いばらきエコチャレンジ」は、個人と事業所のそれぞれに向けて環境意識向上を促す仕組みになっている。
茨城県で地球温暖化対策に取り組む川上菜央さんも「『ブレンディ』ザリットルを通じて茨城県民が省エネに取り組んでいただけるきっかけになればいいと考えている」と期待する。
店頭に掲出されるポスターは、茨城県公認VTuber・茨ひよりと二次元バーコードをあしらい「いばらきエコチャレンジ」への登録を呼びかける内容にもなっている。「登録すると、ご家庭の省エネ行動をWEB上でチェックするとCO2排出削減量が表示され、光熱費を入力すると他の世帯との比較ができる」と説明する。
茨城県はいばらきエコスタイル・エコチェックシートの推奨とともに、CO2排出が将来に与える影響もわかりやすく伝えていく。「環境問題をより自分事化していただくために、CO2を排出することで災害の増加などの気候変動につながるということを伝えていきたい」という。
カスミの独自の活動としては、副次的な効果としてCO2削減も見込めるフードバンク活動を135店舗で展開し、販売管理のために売場から撤去した賞味期限・消費期限前の食品をこども食堂などに寄付している。
ただしこの活動については「昨年は16t寄付したが、差し上げるのが目的ではなく本来は廃棄自体を減らしていかないといけない」(カスミ・伊神さん)とみている。
伊神さんはパートナーとの協働によるSDGs推進を繰り返し訴える。
「1社だけだと負担が大きく持続が難しい。複数の企業に参画していただき業界全体としてカーボンニュートラルを目指していきたい」と述べる。
そのパートナーとして先陣を切った味の素AGF社は、好例をつくるべくさまざまな提案を予定している。
東京支社関東支店長の久斗裕文さんは「スティックは若年層に購入される傾向にある。特に若年層は環境意識やエシカル消費の傾向が強く次世代のファンも増やせる」と飲用層の拡大を見込む。
グループ長の新堀利昭さんは今夏の展開を見据える。
「『ブレンディ』ザリットルは冷たい水にも溶けるということで夏場がメインのため、今回、冬場で売場をつくっていただき認知を広げて夏場に売上げをぐんと上げて啓発強化につなげたい」と意気込む。
グループ長代理の頓田健一郎さんはAGFインスタントコーヒーの詰め替えタイプなども対象商品に推奨する。
「当社には『ブレンディ』ザリットル以外にも環境配慮型商品や社会課題解決型商品を取り揃えており、幅をもたせてオールシーズンで提案できる」と胸を張る。