百貨店 売上増から一転、逆風へ デジタル事業が加速化 連載・アンダーコロナキッチン第2章「需要激変」〈4〉

百貨店大手5社が1日に発表した11月度売上高速報値は、三越伊勢丹ホールディングス14.7%減、J.フロントリテイリング(大丸松坂屋百貨店)20.0%減、エイチ・ツー.オー・リテイリング(阪急阪神百貨店)13.7%減、髙島屋12.9%減、そごう・西武11.1%減となった。新型コロナウイルスの感染が再び拡大して、都市部の基幹店を中心に客足が鈍化したほか、インバウンド需要の消失がさらに追い打ちをかけた。

かつて「小売の王様」として君臨してきた百貨店業界だが、近年はネットサービスの充実とともに消費者構造が変化し、売上げ低迷に頭を抱えてきた。コロナ前から百貨店業界の売上げは厳しく、再建を目指して基盤強化や抜本的改革を進めてきた。そこにインバウンド需要の成長が都市部の基幹店売上げを支え、ようやく息を吹き返したところにコロナショックが直撃した。

4月に緊急事態宣言が発令され、百貨店は大型商業施設として臨時休業や営業時間を短縮。さらには訪日外国人の激減が各社業績に大きな影を落とした。大手各社の2月期、3月期の上半期売上高は前年比3~4割の大幅減収。通常営業の再開とともに回復傾向にあったものの、一進一退が続き、復活の時期すら読めない。

店頭販売が軒並み激減した中、唯一成長拡大したのは国内および海外向けECだ。近鉄百貨店の上半期は、食料品や日用品のネット販売強化が功を奏して国内EC売上げは71%増、また中国を主とした越境ECサイトは10倍に成長した。

コロナ後は新しい生活が各所で求められている。一変した消費行動や価値観の変化、飛躍的に社会に浸透したデジタル化に、百貨店はどのようなサービスを提供していくのかが注目を集める。

J.フロントリテイリングは、これまでのリアル店舗で培ってきた顧客基盤とコンテンツ開発力を生かして、リアルとデジタルを融合させた新たなビジネスモデルを模索。不採算事業の撤退や固定費の削減など経営構造改革、コロナ前から進めてきたパルコとのシナジー創出とともに実行する。「これらの対応を誤れば、企業存続の危機となることは明らかだ」(好本達也社長)。

エイチ・ツー・オー・リテイリングは、現在売上げの2~3%を占めるEC事業を拡大するため、DXによるマーケティング強化へ転換。「リアルでの買い物体験を、リアルとオンライン両方で可能にしたい」(荒木直也社長)という。

今秋、阪急阪神百貨店では、デパ地下で扱う本格ケーキを全国へ宅配するサービス「CAKE LINK(ケーキリンク)」を百貨店で初めて開始した。冷凍にすることで、一部離島を除く全国へ宅配できる。店頭に行かなくとも自宅で受け取りが可能であり、解凍すれば生ケーキ同様の味が楽しめる。第1弾の「アンリ・シャルパンティエ」監修のケーキから販売を開始。2021年度中に10ブランドに拡大。22年度に売上高10億円(販売台数20万個)を目指す計画だ。

百貨店を取り巻く環境が一変して逆風が吹く中、各社は新たな需要の掘り起こしを狙う。コロナが終息した時には、もはや「従来の百貨店」はなくなっているに違いない。