ネスレ日本を含めた産学官連携で大規模な国産コーヒーの栽培を目指す「沖縄コーヒープロジェクト」が始動した。企業の競争優位性を持たせつつ個人・家族・地域・地球環境に貢献するネスレのCSV(共通価値の創造)の一環。同プロジェクトを起点に沖縄で“コーヒーの輪”を広げて地域に貢献していく一方、ネスレとしてはコーヒー調達網を拡大していく。
17日都内で発表したネスレ日本の高岡浩三社長兼CEOは、日本での栽培支援について「われわれが世界的に生産者をサポートしていても、10年、20年先の供給に対し確保できる自信があるかと問われれば分からない。一方、世界の消費量は増え続けており、生産の可能性があるならば“日本でも”というのは非常に大事だととらえている」と語った。
ネスレが現在世界17か国で行っている「ネスカフェプラン」では、ネスレが派遣する300人以上の農学者が毎年3万以上の農園を支援し18年までに1億6千万本のコーヒーの苗木を提供。沖縄では耕作放棄地などを活用して20年4月までに1万本の苗木を移植する。
農作業などの実務はサッカー元日本代表の高原直泰氏が率いる沖縄SVが担い、沖縄SV、ネスレ日本、沖縄県名護市、琉球大学の4者が連携する。
ネスレ日本の深谷龍彦常務執行役員飲料事業本部長は、沖縄コーヒーの地産地消や収穫体験のコト消費の青写真を描く。同プロジェクトには波及効果を見込み「仮に1万本すべてから収穫できたとしても40万杯程度。年間500億杯以上の需要が日本に存在する中で1%にも満たないことから、いろいろなところに伝播して、新しく農業を始める方、他の作物から転換される方が増えていかないと本当の意味での産業にならない」との考えを示した。
沖縄県産農産物は、物流費高騰などよる競争力低下が課題の1つ。
名護市の金城秀郎副市長は同市の農業について「農家数・農業算出額はともに近年増加傾向にあり好調だが、稼げていない農家が全体の8割を占める」と説明。琉球大学の和田浩二農学部長は、台風対策について「大学のコーヒー畑に樹木や果樹を植えて研究していく。沖縄では昔から台風対策として樹木を植えているので、そういう情報も集めながら工夫していきたい」と述べた。