悩める若い女性らの相談相手として、あるいは、日本ならではの体験を求める訪日外国人旅行者の関心の的としてスナックのママが脚光を浴びている。
こうしたナイトカルチャーの新常識に着目して、三幸製菓が9月29日に新発売したのがミックス米菓の「ママのイチオシ」。スーパーやドラッグストアなどの小売店で販売されており、将来は次世代とスナック文化をつなぐ商品として全国に10万軒あるとされるスナックの開拓を視野に入れる。
9月29日、東京・新橋で発表会に臨んだ足立和彦執行役員マーケティング統括部長兼マーケティング部長は「業務用の販売物流網は構築できていないが、スナックのママが仕入れられるようなルートを開拓したい」と意欲をのぞかせる。
同商品を共創した国内最大級のスナックエンターテインメント集団・オンラインスナック横丁(スナック横丁)の五十嵐真由子代表も「毎日お客様に提供するものであるため、お酒と一緒にママに直接卸せるようになるのが一番いい」と語る。

開発のきっかけは、三幸製菓が商品提供して協賛したスナック横丁主催のイベントだった。
その頃、女性向け商品のアイデアを探していた足立氏はイベントに立ち会い、そこでママに恋愛相談する若い女性の存在を初めて知る。「スナックの使われ方が昔と異なっており、何か一緒に面白いことができそうだ」(足立氏)と思い立ったという。
その後、スナック横丁主催の初心者ツアーに参加して決意を固める。
「ママとのコミュニケーションで幸せを感じておられるお客様が多いことが把握できた。今回、新橋のママにご協力いただいたが、いろいろなところで『ママのイチオシ』が作れたら面白い展開になる。ママにフォーカスして、日本中のママが“私たちのところでもやって”と声をかけていただけるように発信していきたい」と述べる。

五十嵐代表もママとのやり取りで幸せを感じた一人。この最初の体験からスナック通いが趣味となり、趣味が高じてオンラインサイト「スナック横丁」の立ち上げに至ったという。
「前職でいろいろな地方を営業で訪れると“東京の会社の者がこの土地の何を知っているのか”と必ずお叱りを受けていた。ある日、嫌だなと思いながら前日入りすると、たまたま乗ったタクシーの運転手から“地方を知るにはスナックに行かなきゃダメだよ”と教えられ、あるスナックを紹介いただいた」(五十嵐代表)と振り返る。
この助言どおり、その日の夜に五十嵐代表がスナックを訪れると、地元の名士が一堂に会していた。運転手からの連絡で営業の悩む五十嵐代表のことを知ったママが呼び集めてくれていたのだという。
「深夜1時までいろいろな話で盛り上がり励まされもした。さらに翌朝、営業へと宿を出ようとすると驚くことにママがいて“あなた朝ごはん食べてないでしょ。勝負事には食べないとダメよ”とおむすびを手渡して下さった。それを涙ながらにいただき、こうして私のスナック人生の1ページ目が開かれた」と述懐する。

その後、五十嵐代表は全国1200軒以上のスナックを訪ね歩き“スナックマニア”“スナ女”と自称。コロナ禍で苦境に立たされるスナックを盛り上げるべく2020年に「スナック横丁」を立ち上げ画面越しにスナックのママとコミュケーションできるサービスを開始した。
外出自粛が解かれた2023年には、リアルでの初心者ツアーや外国人ツアーも開始。現在、1000軒以上のスナックのほか、遊技・飲食関係とのネットワーク網を構築している。
「ママのイチオシ」は、スナック横丁と東京・新橋の人気スナックのママとの共創で開発された。開発にあたっては、20軒の協力を得て、20種類以上に及ぶ菓子の試食・アンケートを実施した。
同商品は、試食を経てランキング形式で選ばれた5種類の米菓(せんべい・あられ)とピーナッツの計6種類をアソート。パッケージ裏面には各種を一押しする6人の新橋スナックママの名前が記載されている。

昭和レトロな雰囲気をイメージした外装に加えて個包装にもこだわった。
個包装にはスナックの内観とママの一言コメントをデザイン。外装と個包装にはブランドサイトにつながる二次元コードもあしらい、ブランドサイトでもスナックの内観やママの一言コメントが閲覧できるようになっている。
同商品について、開発に協力した新橋スナックママの一人・スナックAeru(あえる)のうららママは「常連さんに“うちが協力した商品”と紹介すると、常連さんが広めて下さるはず。そういうことをきっかけに当店を知っていただけると嬉しい。営業チックになるのではなく、いろいろなことにチャレンジしているお店と思っていただけると、興味を持っていただける」と期待を寄せる。
主なターゲットは、30代後半から50代前半の女性。ビールだけではなく幅広いアルコールの飲用シーンでのおつまみ需要の獲得を目指す。
