キリンビバレッジの「ファイア」ブランドは、好調のペットボトル(PET)コーヒーの「ワンデイ」シリーズに注力し、ブランド力を強化する。
今春はコミュニケーションを見直し、「ファイア」ブランドイメージを強化するプロモーションを企画。物性的・機能的価値を呼びかけていたコミュニケーションから、情緒的価値をアピールするコミュニケーションに刷新する。
マーケティング部ブランド担当の諸橋桜子氏は「これまでは、直火仕上げのおいしさなど商品にフォーカスした内容が多かった。今後は心に火を灯すブランド、飲む人を鼓舞するブランドとしてアピールする」と意気込みを語る。

新コミュニケーションでは、看板商品の「ワンデイ ブラック」を活用しながら、「ファイア」ブランドのイメージ刷新を図る。
「『ファイア』はバブル崩壊直後の1999年に生まれ、今年で26年目となるブランド。昔からある缶コーヒーのイメージが強く、“おじさん世代”のようなブランドイメージを持たれている方もいることがわかってきた。かっこよく今っぽいブランドであることを、メインターゲットの30-40代男性を中心にしっかり伝えていく」と述べる。
コミュニケーションの刷新にあたり、歴代のCMを見直し、インタビュー調査を実施した。
インタビュー調査で浮上した「『ファイア』は励まされるブランドイメージがある」「朝、仕事前に『ファイア』のコーヒーでやる気になる」といった声を受け、飲む人を励ますブランドとしての立ち位置を高める。
今後はTVCMとWEBCMを展開し、店頭キャンペーンも行う予定。
WEBCMは、ブラックコーヒー関心層をメインターゲットに設定。具体的にはデスクワーカー、スポーツやゲームを好む人などに照準を合わせる。
「スポーツをしている人は、糖分などを気にされてブラックコーヒーを飲まれる方が多い。ゲームが好きな人も、気分をシャキッとさせ長く飲めることからPETのブラックコーヒーの飲用者が多いようだ。コーヒーへの興味が高いグループを対象に、デジタルでのコミュニケーションを行う」と説明する。
「ファイア」ブランドの2024年1-12月の販売数量は、前年比3%増で着地。「ワンデイ」シリーズは、「ファイア」ブランドの売上の約半数を占めるまでに拡大した。
「ワンデイ ブラック」は、昨年10月にリニューアルしたところ、好調に推移している。
「『ワンデイ ブラック』のリニューアル後のリピート率、トライアル率がどちらも格段に良い。過去のリニューアル実績と比べて、リピート率は約1割高く、トライアル率は約3割高い。3月下旬には、早々にリニューアル後の販売本数が1億本を突破する見込み」との手応えを得る。
リニューアルを機に、量販店チャネルを中心に配荷が拡大。配荷が拡大することでトライアルがされやすくなり、新たな飲用者の獲得にもつながっている。
「“置くと売れる”と評判になり、ここ3年ほど『ワンデイ ブラック』のカバー率はじわじわと伸び続け、棚から落ちることもない。『ファイア』ブランドの飲用経験率も上昇しており、『ワンデイ ブラック』がその牽引役となっている」と振り返る。
昨年10月の価格改定直後は市場全体と同様に落ち込みが見られたが、その後は回復基調にあるという。
「ワンデイ」シリーズの「ワンデイ ラテ微糖」「ワンデイ 甘くないラテ〈砂糖不使用〉」は、それぞれ堅調に推移。
「ワンデイ ラテ微糖」は、昨年10月のリニューアルによって味覚の評価が高まり「ファンをしっかり維持している」。
「ワンデイ 甘くないラテ〈砂糖不使〉〉」は、コミュニケーションを打たずとも堅調な回転を維持。
「『ワンデイ ラテ微糖』とは異なるお客様がついており、甘くないラテというサブカテゴリーが確立しつつある。今後も3本目の柱として維持向上させていく」と力を込める。
昨年3月に発売した、香り高さにこだわった高価格帯の「アロマブリュー」シリーズは、新規顧客を獲得。
「カフェのユーザーなど、PETコーヒーとは明確に違う顧客基盤を獲得することができた。容量が400mlとPETコーヒーにしては少なめであることや、おいしそうな印象が飲用につながった」とみている。
一方で、高価格帯ならではの課題も見つかったという。
「期間限定品ではなく、定番品で高品質・高価格帯の商品を出す難しさを学んだ。価格に対する納得材料の打ち出しが難しかった」と語る。
今後は、この知見も活かし2026年に向けて研究開発を進めていく。
「原価が高騰しているものの、コーヒーはお客様の生活を豊かにしてくれるものだと思っている。『ワンデイ』に注力しながら、高付加価値コーヒーもチャレンジし続けていく」と意欲をのぞかせる。
今後のコーヒー飲料市場については、価格改定の影響や原料価格の高騰によるコスト環境の変化により、販売数量は厳しくなるとの見方を示す。
市場全体は、今後も缶はダウントレンド、PETコーヒーが順調な動きをみせると予測。近年では、コーヒー飲料と言うと缶ではなくボトル缶・PETの商品を連想する消費者も多いという。
「お客様の調査で、これまでずっと缶コーヒーを飲んでいた方がPETコーヒーに流入する流れも見えてきている。容量に対するコスパの良さやリキャップできる便利さ、PETコーヒーがおいしくなっていることに気付き選んでいるようだ。コンビニのカウンターコーヒーと時と場合に応じて飲み分けて購入される方もいる」と語る。
![]() |
![]() |