健康食品、医薬品など健康総合受託メーカー・アピ(岐阜県岐阜市、野々垣孝彦社長)の24年8月期業績(速報ベース)は、売上高が前年比8.3%増の500億1200万円、経常利益も増益の着地となる見込み。
主力事業の健康食品と医薬品が堅調に数字を伸ばし、単体で売上高500億円を達成した。今期は引き続き健康食品と医薬品を軸に売上拡大を目指すとともに、生産性向上で利益確保に力を注ぐ。また、次なる成長に向けた中長期ビジョンも策定。組織強化や生産キャパシティ増強のための工場再編、海外事業拡充に向けた体制整備などを進める。
セグメント別業績は、蜂蜜21億600万円(3.2%減)、健康食品344億5100万円(9.0%増)、機能性食品原料2億1000万円(25.8%減)、医薬品120億4900万円(13.4%増)、化粧品4900万円(19.7%減)、アグリビジネス7億1400万円(2.3%増)、その他4億3300万円(42.4%減)。
前期はALPS処理水の風評被害や紅麹問題などで「会社としては逆風の環境にあった」(野々垣社長、以下同)が、「顧客への対応や情報提供がしっかりできたことでご評価いただいた」とする。
健康食品については、全般に自粛ムードが広がったものの、インバウンド需要の回復やECの好調販売、新規顧客開拓などが下支えした。
医薬品部門では抗生剤の製剤、特に点滴や手術で使う注射剤の安定供給に努めるとともに、事業の柱として取り組んでいるバイオ事業でも原料、製剤の両面で環境を整え受託案件増に対応。
また、取り組み4年目となる経腸栄養剤も本格製造に着手。今期売上に大きく寄与してくるという。
原料調達から原料加工、製剤化、製品化を一気通貫で出来ることや、液剤・固形剤の両方が扱えるという他社にない強みを武器に、顧客へのコスト削減提案や付加価値・差別化提案も推し進める。
今期業績予想は、売上高が前年比19.5%増の597億5300万円、経常利益は33億5300万円。設備投資は64億800万円(前期は22億5700万円)を計画する。
また「人と環境の健康社会に対しモノづくりにおいて寄与し、世界中の人々から必要とされる企業への昇格」を旗印に、中長期ビジョンを策定。中期計画として、5年後に生産キャパシティを現在から倍増。グループ売上高800億円を目指す。
その実現に向けて、健食と医薬品と双方で設備の更新、老朽化への対応、自動化ラインの導入などを進める。その中核的な施策として本巣工場の再編を予定。原料加工分野の強化を図る。
「これまではずっと継ぎはぎで設備を足してきた。市場が伸びているときはなんとかなったが、それでは効率化にも限度がある。いまは環境変化のスピードが速い。きちんとリサーチして、中長期的な増産体制の構築、効率化を図っていく必要がある」。
さらに、「10年後の長期ビジョンではグループ売上高1000億円を目指しているが、今の延長上だけでは達成できない。海外事業の拡大、あるいはM&Aや業務提携なども視野に入ってくる。新領域として10年先の長期ビジョンで掲げられるもの、それを先の5年で作っていきたい」。
海外事業に関しては、今期から「新規戦略海外事業課」を設置。中国を含むアジア圏や欧米での事業拡大を図る。「海外比率は健食だけでみるとまだ5%未満。5年後には50億円を目指す」。
組織強化では、6月末に新オフィスに移転。システム部に「デジタル推進課」を新設し、営業活動推進のためのサポート部門を充実させた。