小笠原島レモンの果皮を揚げた柑橘スナック「さくピー」登場 売上げの一部を小笠原諸島の自然保護・観光振興に使用

 小笠原島レモンの果皮を揚げた柑橘スナックが開発された。

 商品名は「さくピー 小笠原島レモン うま塩味」(12g・税込360円)。

 手掛けるのは、青果・果実加工品・農産物加工品を製造販売する日本果汁。同社は2009年11月、京都で創業し、現在、従業員数38人、年商10億円に上る。

 果汁に加え果皮も有効活用することで、果実の買取り価格を上げるとともに販路を広げて、果実そのものの認知につなげるべく事業を展開している。

 今回初の試みとして、人手不足が深刻化する中小農家の現状を踏まえ、「さくピー」の売上げの一部を小笠原諸島の自然保護・観光振興の財源に充ててもらうようにする。

 7月19日、都内で発表した河野(かわの)聡社長は「非力だが、今回、売上げの一部を社会に還元する商品を開発した。これを頑張って成功させて、さまざまな産地のものをたくさん販売し少しでも貢献していきたい」と意欲をのぞかせる。

 「さくピー」は7月20日、販路を限定して先行発売され、順次、都内スーパーや都内コンビニ、特産品売場で発売される。25年6月までの約1年間で3万個の販売を目標に掲げる。

 25年1月には「さくピー」第2弾商品の販売を予定している。

小笠原島レモンと「さくピー」の中身 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
小笠原島レモンと「さくピー」の中身

 第1弾の「さくピー 小笠原島レモン うま塩味」は、真空フライ製法により低温で揚げ、小笠原島レモンのおいしさやスパイシーな風味をそのままに塩と合わせた。フライの工程は外部委託している。

 小笠原村観光局によると、小笠原レモンのルーツは、中国が原産の「マイヤーレモン」にある。
 1900年代初旬に、アジアの植物を採取していたアメリカ農務省の職員フランク・ニコラス・マイヤーが持ち帰って導入したことから、この名前がつけられた。

 マイヤーレモンはオレンジとレモンを掛け合わせて作られた品種だと考えられていて、果皮がオレンジ色に近い、濃い黄色をしている。一般的なレモンよりも大きめで丸みのある形をしており、果汁を多く含む。味も通常のレモンと比べて酸味が少なく糖度が高めでまろやかなのが特徴。

 このマイヤーレモンと同じ種類であると考えられるレモンを、日本人の菊池雄二氏が1940年(昭和15年)にテニアン島から持ち帰り八丈島に導入。“菊池レモン”と名付けられ、1973年に小笠原へ導入された。

右から東京都島しょ振興公社の片岡務事務局長、宝酒造の大﨑学商品第二部課長、日本果汁の河野聡社長、小笠原村の渋谷正昭村長、小笠原レモン生産部会の濱崎康宏会長、小笠原村観光局の根岸康弘事務局長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
右から東京都島しょ振興公社の片岡務事務局長、宝酒造の大﨑学商品第二部課長、日本果汁の河野聡社長、小笠原村の渋谷正昭村長、小笠原レモン生産部会の濱崎康宏会長、小笠原村観光局の根岸康弘事務局長

 その魅力について、小笠原村の渋谷正昭村長は「どちらかというと甘い香りよりも爽やかな香りが特徴だが、花が咲く2~4月は本当に甘い香りがする」と力を込める。“レモン林のあまい香りの中で”の一節が出てくる小笠原民謡「レモン林」も披露した。

 小笠原の産業の一番大きな柱は観光。次いで、漁業、農業の順となる。農業では、パッションフルーツを筆頭に、ミニトマト、レモンの3つが柱となっている。

 レモンの収穫状況について、小笠原レモン生産部会の濱崎康宏会長は「農業の中心は母島で、レモン畑は2ha程度。収量は年によって異なり多い年は20トン。台風の襲来が多く、その半分以下の数トンとなるときもある」と説明する。

発表会では小笠原村観光局の公式キャラクター「おがじろう」が登場し小笠原の魅力もアピール - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
発表会では小笠原村観光局の公式キャラクター「おがじろう」が登場し小笠原の魅力もアピール

 小笠原の農業の課題も多分に漏れず人手不足にある。

 この課題にも向き合うべく、日本果汁と、日本果汁の原料供給先である宝酒造の有志は10月、東京都島しょ振興公社が実施する定住促進を目的とした農業就業体験者とともに、産地を訪れ収穫を手伝う。

 宝酒造は、ご当地の嗜好性やグルメに合う地域限定のチューハイとして「寶CRAFT〈小笠原島レモン〉」(330ml)を2018年から販売している。