コーヒーの2050年問題 貧しい小規模生産者に視線 国際的な研究機関の幹部にアジア初就任したキーコーヒー柴田裕社長が抱負

キーコーヒーの柴田裕社長が、コーヒーに関する国際的な研究機関ワールド・コーヒー・リサーチ(WCR)のボードメンバーに就任した。

5月8日、キーコーヒー本社(東京都港区)を訪れたWCRのジェニファー・バーン・ロングCEOが明らかにした。

WCRは、2012年の設立以来、アジア初のボードメンバーとして柴田社長を迎え入れる。
コーヒーの消費国と生産国で長年ビジネスを展開しているキーコーヒーの知見をWCRの運営に色濃く反映させることで、「コーヒーの2050年問題」解決に向けた活動を力強く推進していく。

2050年問題では、全世界のコーヒーの約6割を占める高品質なアラビカコーヒーは気候変動による気温上昇や降雨量の減少などさまざまな影響を受け2050年には栽培適地が15年比で半減すると言われている。

柴田社長は「WCRとの調査研究の中で進めてきたことに一歩踏み込み、世界中で困っている小規模生産者をなんとかして助けていきたい」と抱負を述べる。

ロングCEOも「コーヒー生産は、小規模生産者に頼るところが大きい。特に、最貧国の小規模農家が自立し、持続可能な生産を行い。家族やコミュニティーの発展に寄与するのが我々の大きな目標の1つ」と語る。

WCRの調べによると、世界中で貧困にあえぐ農業従事者は約1億人。うち約1250万人がコーヒー生産者となる。

ロングCEOは、貧困にあえぐ生産者のイノベーションの欠如が2050年問題の解決に立ちはだかる一番の課題だと指摘する。
「品種開発などイノベーションへの投資ができない地域がほとんどで、それらの地域を助けていくのが一番の課題」と説明する。

社会・経済・環境の持続可能性の3つの柱の強化につながる手法を用いて生産されたものであることを意味するレインフォレスト・アライアンス認証といった認証取得が困難な生産者にも目を向ける。

柴田社長は「サステナブル調達は認証が取れているものしか買わないという考え方もあるが、認証が取れず気候変動に負けてコーヒー生産をやめざるをえないところを助けていきたい」との考えを示す。

WCRは、品種改良(育種)や政府機関との連携に取り組んでいる。

コーヒーの品種には、species(スピーシーズ)とvariety(バラエティ)の2つの意味がある。
スピーシーズは、自然の状態で発生した国際自然保護連合(IUCN)に登録されているコーヒーを指し、種類はアラビカ種・カネフォラ種(通称ロブスタ)・リベリカ種など計124品種に上る。

一方、バラエティは、人為的に開発された品種で植物新品種保護国際同盟(UPOV)に登録されたものを指す。
WCRでは現在111品種あるバラエティを2030年までに211品種へと増やしていく。
これにより「新しい品種というオプションが増えることで生産者にとって、その地域にあった利益を上げることができる」とロングCEOは期待を寄せる。

各生産国の政府機関には、コーヒーが外貨獲得の有効な手段であることを引き続き啓発していく。

生産者の自立も促す。
「これまでウガンダの農家にはコーヒーの苗木を無償提供していたが、生産者の努力を促進するため、信用プログラムを策定し3年後には(投じた資金を)回収することで、生産者には苗木を価値あるものと認識していただく。このようなプログラムを各国とともに策定していくのも我々の重要な活動の1つ」と説明する。