裾野拡大へ「ウメ」限定投入
伸び盛りの缶チューハイ市場。シェア獲得に向けた各社の戦略が今年も加速する。なかでも大きなトレンドを形成しているのが、食事に合うさっぱりした後味で支持を広げる無糖チューハイだ。この領域をけん引するキリンビールでは未体験層へのアプローチも強め、一層の裾野拡大を目指す。
01年発売のロングセラー「氷結」は、同社RTD(缶チューハイなど)出荷量の約7割を占める主力ブランド。なかでも20年から加わった「氷結無糖」は躍進を続け、今では同社RTDブランドのNo.1だ。
「好調の背景は、ビール類とRTDの両方を飲む層の増加」と説明するのは同社RTDカテゴリー戦略担当の松村孝弘氏(2月26日「絶好調『キリン 氷結®無糖』新商品&2024年戦略発表会」で)。
「『氷結無糖』の誕生後『甘みが抑えられていそう』『食事と一緒に楽しめる』といった理由でRTDを選ぶ人が増えている。食事の新しい楽しみ方が定着してきた」。
発表会に登場した世代・トレンド評論家の牛窪恵氏(インフィニティ代表取締役)は「今はシンプルで本質的に良いものが選ばれる時代。それを消費者は気分に合わせてミックスしたりトッピングしたりしている」として、RTDにも同様の流れがあると解説。「『氷結無糖』はシンプルで本質的に良いものであることに加え、その日の気分に応じて食事との組み合わせを楽しめる点がトレンドとマッチしている」との見方を示した。
さらに「生活に寄り添うものが支持され、選ばれる傾向にある」と指摘。「帰宅してクッションに身をうずめるときのように、『氷結無糖』は生活に寄り添うブランドとしての安心感が大きい」こともポイントだと語る牛窪氏。不確実性が高まる時代に「裏切られたくない」「失敗したくない」との意識が若い世代を中心に強まる。そんななか、間違いのないブランドの安心感が支持されているとみる。
ブランドマネージャーの加藤麻里子氏は「氷結無糖はリピートされる方が多い。安心感があり、晩酌に寄り添ってくれる存在になっていると思う」と応じた。
初の限定品「ウメALC.7%(期間限定)」を3月5日に発売。レモンをはじめ柑橘系が定番だったブランドとして「ウメ」は初の挑戦だ。
「『無糖』という言葉から『飲みにくそう』『味気なさそう』などの先入観を持たれているお客様もいる。お試しいただく機会を作るため、これまでとはひと味違うフレーバーを投入。引き続き、多くのお客様に手に取っていただける商品を展開していきたい」(松村氏)。