ポッカサッポロフード&ビバレッジの征矢真一社長は、時松浩次期社長への交代が発表された12月21日以前、本紙取材に応じ今年の振り返りと来年の方針について以下の通り語った。
――今年を振り返ると。
征矢 社長として想定外があってはいけないが、読み切れなかったのが原料高。カバーしきれず総括すると厳しい1年だった。商品が途絶えるなどSCMも乱れてしまい、SCMの安定化も喫緊の課題。
トップライン(売上収益)については、伸ばそうとしたところはやり切ることができた。
自販機の台数を政策的に減らしたこともあり全体的にはフラットだが、成果としては、ずっとレモンにこだわってやってきたことで「キレートレモン」が7年連続で過去最高の販売を更新した。
これには、訴求をビタミンCからクエン酸に切り替えて、クエン酸が市民権を得たことが大きい。レモンでクエン酸が想起されるようになった。レモンの過去のイメージは“カラダにいい”レベルであったが、今では“レモンでどのように健康になるのか”と高度化されている。
クエン酸は疲労感を軽減するとされ、この点がコロナ禍で受け入れられた。コロナ禍で在宅勤務が推奨されるなど行動制限がかかったことで、肉体的疲労よりも生活のリズムが乱れたことによる疲労が増えたとみている。そうした中、機能性表示食品の「キレートレモン クエン酸2700」で疲労感軽減を訴求したことが受け入れられたようだ。
今秋新発売した、“顔のむくみ”に対応した「キレートレモンMUKUMI」も新たなニーズをつかみ「キレートレモン」の瓶タイプ3品で2022年も前年を上回る販売数量を記録した。
幅広い層へのアプローチではPETの「キレートレモンWレモン」の役割も大きい。やはり飲料は調味料などと比べると物量が大きく、出口戦略として考えたときの影響力が強い。
調味料は週何本売れたという世界だが、飲料は1日に何本売れたという世界。「キレートレモン」もPETになるとお客様へのリーチの数が格段と増えるためブランドをアピールする上でも大事な領域だと考えている。
一方、「キレートレモン」とともに右肩上がりに成長を続けてきたレモン食品の「ポッカレモン」は8月に価格改定した影響で伸びは鈍化したものの高い水準を維持している。
――その他の事業について。
征矢 プランツミルク事業については、植物性ヨーグルトは当社も市場も拡大している。「SOYBIO(ソイビオ)豆乳ヨーグルト」は“これでないとダメ”というお客様が確実に存在するレベルになった。ただ、乳のヨーグルトと比べるとお客様の厚みが薄く、もっともっと伸ばしていきたいが、攻めあぐねている。
一方、植物性飲料は売場が確実に広がっており、アーモンドミルクの「アーモンド・ブリーズ」は「砂糖不使用」の伸びが著しく好調に推移している。「砂糖不使用」の1Lは昨年、過去最高の出荷を記録した。
プランツミルク事業はチルドのため、我々のメインとするドライのビジネスとは別の能力が求められる。今年、バリューチェーンをある程度固めたほうがよいと考え、3月に組織変更を行い、プランツミルク事業部の傘下に商品戦略グループ・群馬製造グループ・チルド物流グループを設置した。
スープ事業は、在宅や巣ごもり需要でおいしさにこだわり手間暇かけてスープや料理をつくるニーズが出てきたと思ったが、ここにきてまた時短や簡便ニーズが高まっている。
これを受け我々は両極を狙っていく。簡便ニーズの高まりに対しては「おうちスープ」シリーズの大容量袋タイプで対応していく。
一方、本格志向には「じっくりコトコト」で対応するのだが、コモデティ色が強くなってきてしまったため、これからブランドを再構築していく。
缶スープは、「じっくりコトコト冷製缶」シリーズとして展開していたのを改め、今年リニューアルを行いシリーズ名も「やさいのじっくりコトコト」へと改めたところ売場がだいぶ広がっている。
――来年の方針は。
征矢 事業別ではレモン事業と海外事業を重点領域に定める。「ポッカレモン」が名古屋工場で製造開始して60年の節目を迎えることもフックにしていく。
海外事業は売上げの2割を占め、茶系飲料でシェアNo. 1を堅持しているシンガポールを起点にマレーシア、中東など成長余地のある国で売上拡大を図りグループの成長ドライバーを目指す。
シンガポールは健康志向の高まりを受け、日本の知見も活用してヘルス&ウエルネス系商品を追求する。マレーシアは流通網や商品展開を再構築してステータスを上げていきたい。中東はエナジードリンクでシェアNo.1のUAEなどへの輸出を拡大するとともにマーケティング拠点を新設する。
基盤としてはシンガポールに「Pokka Logistics Hub」を新設し物流・オフィス・R&D機能の集約を図る。
ヤクルトさまとの業務提携では、レモンと発酵・乳酸菌との組み合わせで世の中に新しいものを出していくことが一番やりたいことで、その第一弾としてヤクルトさまから ヨーグルトが発売された。当社からの商品発売も楽しみにしていただきたい。