「ステロイドはしっかり塗らなければ効果は期待できない」 アトピー性皮膚炎の最新情報 大塚製薬がセミナーで啓発

 アトピー性皮膚炎は正しいとされるケアを行えば症状が起こらない状態を保つことができ、近年は新しい治療薬が次々と発売され、その治療において大きな変化を迎えている。

 大塚製薬は13日、アトピー性皮膚炎に関する最新情報を伝えるべく専門家を招きプレスセミナーを開催した。
 治療の大きな柱であるステロイド外用剤に対する誤解・拒否の風潮が治療の妨げになっていると強調するのは、あたご皮フ科副院長で東京逓信病院皮膚科客員部長の江藤隆史氏。

 誤解とは、“ステロイドを塗ってもかゆみは治まらない”や“ステロイドを塗ると皮膚を黒く厚くしてしまう”といった捉え方で、これらの症状はステロイドを薄くすりこんで塗るといった中途半端な用い方によって引き起こされると指摘する。

 「ステロイドはしっかり塗らなければ効果は期待できない。足りないと症状はどんどん悪化する。むしろ過剰に塗ってどんどんよくしてあげないといけない」と江藤氏は語る。

 塗布量のイメージについては「ティッシュをのせて垂直にしても落ちないくらいのベトつき」と説明する。

 アトピー性皮膚炎への初動対応としては「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」に基づき、症状の理解と治療のゴールを決めていくことを推奨する。

 症状の理解には(1)瘙痒(そうよう=かゆいこと)(2)頭・体幹・四肢などへの分布(3)慢性・反復性の経過――の3つの診断基準のうち(1)(2)および(3)の項目を満たすものを症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する。

 このうち(3)については「子どもの頃にアトピー性皮膚炎になり、治ったと思っても成人になって出てくる」事例を挙げ、乳児では2ヵ月以上、その他では6ヵ月以上を慢性とする。

 アトピー性皮膚炎は、増悪と軽快を繰り返す、かゆみのある湿疹を主病変とする疾患。
 治療のゴールはこの点を踏まえて「症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、その状態を維持すること」とする。

 言い換えると、完治を目指すのではなく、日常生活に支障をきたすような急な悪化がおこらない状態を維持することを目標とするもので「薬物なしの治療を目指すのではなく、薬物と上手くつきあっていくというゴールになる」。

 アトピー性皮膚炎治療の柱は(1)原因・悪化因子の検索と対策(2)スキンケア(3)薬物療法――の3つ。
 原因・悪化因子は患者によって異なり「特に子どもは食物抗原がけっこうな悪化因子」とする。

 スキンケアについては「子どもは生まれたゼロ週からバリア機能が少しずつ衰えてくるため、ゼロ週からスキンケアするだけでアトピー性皮膚炎にならない患者が増えてきている。このような患者にステロイド、もしくはステロイドに代わり新しい薬で早期にコントロールすればほとんどゼロにできるというのが私の将来的な展望」と語る。

 続いて講演した広島大学大学院医系科学研究科皮膚科学准教授の田中暁生氏は「ストロングの外用薬で効かない患者にあえてミディアムの外用薬を処方したところ、2,3か月で診察を終了した。外用薬は塗り方によって効果に雲泥の差が出る」と述べ、皮膚炎と痒みの両方に効果がみられた新しい抗炎症外用薬の試験結果を紹介した。

 なお、Datamonitor Healthcare, Treatment: Atopic Dermatitisによると、国内のアトピー性皮膚炎患者数は約 434 万人に上り、年々増加傾向にある。
 皮膚に十分なバリア機能が備わっていないことが発症要因の1つで、乳児期や幼児期に発症することが多く、小児期によくなることが多い一方で、大人になっても持続する場合もある。