セブン‐イレブン、水素焙煎コーヒー全国発売 採用の一番の決め手はおいしさ 「まさに澄んだ飲み応え」阿久津知洋社長が自信

 セブン‐イレブン・ジャパン(SEJ)は10月28日、UCC上島珈琲(UCC)と共同開発した「セブンカフェ 水素焙煎コーヒー」(水素焙煎コーヒー)を全国のセブン‐イレブンで発売する。

 SEJでは、同商品をカウンター商材の中核を担う可能性があるものと位置付け、水素焙煎によるおいしさを前面に押し出し、かつ環境にやさしいコーヒーとして訴求し来店客数や荒利額の増加を図るのが狙い。

 一方、UCCとしては、全国2万1000店舗強あるSEJの店舗網を通じて水素焙煎コーヒーや水素そのものの認知が拡大していくことに期待を寄せる。

 10月24日、都内で開催された「セブンカフェ 水素焙煎コーヒー 新商品発表会」で挨拶したSEJの阿久津知洋社長は、採用の一番の決め手においしさを挙げる。

 「通常の『セブンカフェ ホットコーヒー』(ホットコーヒー)はしっかりとした苦味があり、コーヒー好きな方にご支持いただいている。今回の『水素焙煎コーヒー』は、まさに澄んだ飲み応え。焙煎の熱源に水素を使うことで、とろ火でじっくりと丁寧に焙煎することが可能になり、飲み応えがありながらも、最大の特徴である雑味が後に残らないクリアな後味を実現した」と自信をのぞかせる。

SEJの阿久津知洋社長
SEJの阿久津知洋社長

 「水素焙煎コーヒー」導入の旗振り役を務めたSEJの石橋利彦商品本部FF・冷食食品部FFマーチャンダイザーも「“澄んだ飲み応え”が最大のコンセプトであり、私が非常にこだわったのは“おいしく、かつ環境にいい”こと。販売していただく加盟店の皆様にとっても、地球にとってもいい“三方よし”の商品として自信を持って販売させていただきたい」と胸を張る。

 これに対して、UCCの芝谷博司社長は「SEJさまが今回、我々の水素焙煎技術にいち早くご興味を持っていただき、味わいをご評価いただけたことは、コーヒーメーカーとして大変誇りに思っている」と述べる。

 水素焙煎コーヒーとは、コーヒーを焙煎する際の熱源に、一般的なガスではなく水素を使用したコーヒーのこと。バーナーで水素を燃やして発生した熱風を焙煎釜に送ることで焙煎する。

UCC上島珈琲の芝谷博司社長
UCC上島珈琲の芝谷博司社長

 使用する水素は、官民・他業界の垣根を越えた連携とNEDOの採択を受けて開発されたP2Gシステムを使う。
再生エネルギーをベースとした電気で水の電気分解を行ってつくられる「グリーン水素」であるため、実質的にCO2フリーの熱源となる。

 環境への配慮だけでなく、味わいにおいても優位性がある。水素は最小燃焼単位が小さいため、ガスでは出せない極弱火を出したり、ガスでは難しい緩やかな温度変化をつけたりが可能となっている。

 今回は、ガスでは難しい緩やかな焙煎の温度変化により味わいに価値を見出し、定番の「ホットコーヒー」(R)よりも約20円高い149円で販売する。

 UCCコーヒーアカデミーの土井克朗専任講師は「水素焙煎は、原料に熱を伝える焙煎時に高温と低温の温度調整の幅が既存のガス焙煎の技術と比較して、より広く、より細やかに調整でき、焦がさず澄んだ状態でコーヒーのフルーティーさを引き出すことが可能となる」と説明する。

左から土井氏、芝谷社長、阿久津社長、石橋氏
左から土井氏、芝谷社長、阿久津社長、石橋氏

 差別化された味わいで新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの買い回りを狙う。
 「今まで『セブンカフェ』を飲まれたことのない女性の方にも“スッキリして飲める”コーヒーとして買っていただきたい。メインユーザーの40-60代男性の方には、あくまで一例だが、朝はガツンとした定番の『ホットコーヒー』、昼や午後の時間帯の気分転換に『水素焙煎コーヒー』を飲んでいただきたい」(SEJ石橋氏)という。

 買上点数の増加にも期待を寄せる。

 「定番の『ホットコーヒー』の買い合わせは、おにぎりを一緒に買われている方もおられるが、それほど多くない。『水素焙煎コーヒー』は食中でもいけると考えている。『3種チーズのミートソースドリア』『ソースが決め手の焼きそばパン』『ジューシーハムサンドからしマヨネーズ入り』との相性もよく、まずは初動の動きをみて今後の展開を検討していきたい」との考えを明らかにする。

コーヒーマシン
コーヒーマシン

 各店舗には既存のコーヒーマシンのプログラミングを変更して実装する。マシンのモニターでは水素焙煎コーヒーの説明動画を放映する。

 発売開始とともに、トライアル獲得のための販促施策として20円割引セールを実施する。

 UCCとしては、SEJほぼ全店への導入によって、水素焙煎コーヒーの認知拡大や水素社会の実現に向けた取り組みが大きく前進することになる。

 UCCジャパンの里見陵執行役員サステナビリティ経営推進本部長は「来週(10月28日)から、歴史的に最大と言えるくらい、一般の多くの方が水素に触れることになると言える。このようなことはこれまでの日本や世界の歴史で恐らくなかったことで、お客様の理解という点で大きな前進になった」と力を込める。

 そのほか、水素焙煎コーヒーを量産するUCC富士工場の稼働に対する好影響やホテル・オフィス・カフェなど業務用ルートの導入拡大も見込む。

 UCCとしては、コーヒー豆の価格が高騰し続ける中で、これまでのコーヒー豆の品質や産地とは異なる、焙煎という切り口で単価アップが図れた点も大きな前進と捉えている。

 「豆が高騰している中で、付加価値提案が重要となる。単純な値上げで買われなくなる方が増えてしまうのはよくない。それぞれの産地で水素焙煎を掛け合わせて価値を増幅させることも社内でよく議論している」(UCC里見氏)という。