キリングループ、ヘルスサイエンス事業に本腰 基盤整いアジア太平洋の頂点目指す 酒類事業に次ぐ柱に育成

 キリングループは、へルスサイエンス事業に本腰を入れる。

 アジア太平洋最大級のヘルスサイエンスカンパニーを志向し、2025年に初の事業利益黒字化、2030年に売上収益3000億円規模・事業利益300-330億円を目指していく。

 3月5日 、説明会に登壇したキリンホールディングスの吉村透留取締役常務執行役員ヘルスサイエンス事業本部長は「グループ各社が一体になった、ヘルスサイエンス事業の成長ステージに向けて基盤が整った。それぞれの事業を強くし、その強みをグループ内に波及させていくことが重要」と意欲をのぞかせる。

初の3社合同説明会を開催。左からファンケルの三橋英記社長、キリンホールディングスの吉村透留取締役常務執行役員ヘルスサイエンス事業本部長、Blackmores LimitedのAlastair SymingtonCEO
初の3社合同説明会を開催。左からファンケルの三橋英記社長、キリンホールディングスの吉村透留取締役常務執行役員ヘルスサイエンス事業本部長、Blackmores LimitedのAlastair SymingtonCEO

 基盤が整ったと判断する理由には、ファンケルとBlackmores Limited(以下、ブラックモアズ)の完全子会社化、グループ内の機運の高まり、プラズマ乳酸菌事業の拡大の3点を挙げる。

 キリンホールディングスは、2023年にブラックモアズを、24年にファンケルを完全子会社化。国内外でヘルスサイエンス事業を進める組織能力を獲得した。

 ヘルスサイエンス事業に対する、グループ内の機運も高まっているという。

 吉村氏は「昨年11月、協和発酵バイオのアミノ酸及びヒトミルクオリゴ糖事業を分社化し譲渡を行った。収益の重荷となっていた事業の譲渡の目途がついたことで、収益を上げていこうという機運を高めることができている」と語る。

 ファンケルとブラックモアズの2社の完全子会社化に加えて、キリングループの独自素材「プラズマ乳酸菌」を活用した事業の伸長が、ヘルスサイエンス事業強化の後押しとなった。
 「プラズマ乳酸菌」関連事業は、2024年に230億円規模まで拡大。研究開発により今後も可能性が広がっているとし、「『プラズマ乳酸菌』の事業が、次の成長ベースになると確信できた」と力を込める。

 基盤が整ったことで、長期的に販売数量の漸減を見込む酒類事業に次ぐ柱に育成する。

 「現在の当グループの収益の柱が、酒類の事業であることは間違いない。しかし、アルコールというものに対する長期的な逆風は止まらないとみている。収益の柱がしっかりしているうちに、次の成長の柱をたてていく」と述べる。

 グループシナジー創出の取り組みとしては、キリンとブラックモアズの初の共同開発商品「澳佳寶 4效特攻億菌革命プラズマ乳酸菌粉末」が挙げられる。
 同商品は、「プラズマ乳酸菌」1000億個と食物繊維を配合した粉末のスティック。3月5日からブラックモアズ台湾のECサイト、台湾のECモール「momo」で発売されている。台湾での「プラズマ乳酸菌」の受容性の確認を経て、今後の展開国を検討する。

 キリンホールディングスとファンケルの共同開発も推進しスキンケアに着目した内外美容の提案を行う方針。「サプリメントなのか化粧品なのか、サービスなのか、それらを組み合わせた形態なのかも検討中だが、2026年度中には発表したい」という。

 今後はキリンホールディングスとファンケルの販売基盤の一体化を予定し、グループ外の企業との連携も視野に入れる。
 「免疫ケア以外にも、脳の機能などの分野も視野に入れている。M&Aや提携の機会があれば、事業を育てるためのひとつの手段として積極的に考えていきたい」との考えも明らかにする

株式会社アピ 植物性素材