一般財団法人 日本気象協会は、気象データで使った経済効果を試算した結果、気象の影響を受けやすい食料品・日用品合計の経済効果は年間約5100億円になることが分かった。精度が向上したことで、2017年調査(約1800億円)に比べて経済効果は大きく上昇。同協会では、特に見通しが立てづらい食品には気象予測サービスを大いに活用してほしいとしている。
前回の試算は週の気温推移に着目したが、今回は最新の商品需要予測に関する知見を参考に、中期的な気温経過も重視して試算した。しかも前回は2010年から2017年までのデータに基づくものだったが、今回は17年から23年のデータに基づいて試算。「災害級の猛暑」だった18年夏や、記録的な長梅雨だった20年夏、2018年を上回る猛暑だった23年夏など、極端な気象変化が起こったことにより、経済効果が増えた一因となった。
このほど開催した説明会で日本気象協会の古賀江美子気象デジタルサービス課データ解析G技師は、「異常気象が続く中で、企業は相変わらず前年実績を使って需要を予測している。気象影響を受けやすい商材こそ、きちんと気象の状態を使った需要予測をすべきで、これによってロスを削減してほしい」と指摘。
小越久美気象デジタルサービス課副課長は、「多くの企業が前年実績をベースに生産計画を立てている。近年は猛暑、冷夏、暖冬が繰り返されており、前年実績で計画を立てると機会損失や作り過ぎによる廃棄ロスが発生する」とし、最も気象の影響を受けやすいアイスクリームの場合、前年比で生産計画を立てた場合と、需要予測を使って生産計画を立てた場合とでは、機会ロスや廃棄ロスも含め年間382億円のロスが削減できると試算している。
企業はオペレーション上、最長24か月前にどのくらい商品を作るかを決める必要がある。工場建設の投資を検討する部署や資材を調達する部門、コンビニコーヒーは、ホット用のコーヒー豆とコールド用のコーヒー豆の切り替え時期を検討する部門、防災系企業は来年の台風の発生予測など、カテゴリーや関連部署によって予測ニーズは異なる。気象は唯一、物理学的手法によって未来を予測できるもので、日本気象協会は、高度な解析力と高精度な気象予測で企業ニーズに応えていく方針だ。