ビスケット市場でトップシェアを握るブルボンは、売場が広がらない中でビスケット市場が拡大しているギャップに着目してビスケットの売場提案に磨きをかける。
インテージSRI+によるとビスケット市場はここ数年毎年伸長を続けている。
23年4月から24年3月までの年間販売金額は、4年前の19年4月から20年3月までの1年間と比べて、徳用以外が15.7%増、徳用が21%増に拡大。
市場が拡大する一方、売場については、8月9日、商品・営業戦略発表会に臨んだ井手規秀常務取締役執行役員開発開拓本部本部長が「現実的には大きな変化までには至っていない」との見方を示す。
ブルボンはこのギャップに商機を探る。
「市場にビスケットのアイテム数はたくさんあるが、お客様の選択肢の中にまだ入っていないものが当社だけでなく様々なメーカーでたくさんある。現段階では売場の拡大によるトータルのアップが大きいのではないかと思っている」と述べる。
売場拡大に向けた品揃えにあたっては、ビスケットのメインユーザーが女性層であることから「女性の生活環境や心理的要素も考えていくことが非常に重要」と捉えている。
インテージSCI(23年4月~24年3月)とマクロミルQPR(同)のビスケット購買者構成比(人数)によると、ビスケット購買者の6割以上は女性。年齢層は40~50代、次いで60~70代以上が多くなり、家族構成としては2~4人世帯の親子・夫婦の割合が高くなっている。
夫や子どもがいる家族人数2~4人の40~50代女性に対しては、家族で楽しめる量であってハズレがないプレーンビスケット・チョココンビビスケット・半生ケーキなどの売れ筋商品の購買が多くなると予想。
これに対して、1人~2人世帯の女性の場合は、自分が食べたいものを選ぶ傾向が強くなり、量よりも質を重視するとの見立てのもと、贅沢なものや身体によさそうなものなど付加価値商品を提案する。
今後さらに構成比が高くなる60~70代に対しては「ルマンド」や「ロアンヌ」などのロングセラー商品や食べやすい食感の商品などの品揃えを強化していく。
カカオ豆が歴史的に高騰しているカカオショックにも着目する。
チョコレートで値頃感を打ち出しにくくなる中、ブルボンはビスケットの最適な売場を追求する。
井手常務は、菓子業界のこの秋の一番のトピックにカカオ原料の高騰を挙げる。
国際カカオ機関(ICCO)発表レポートなどを引き「今年度のカカオ豆世界生産量は前年比11%減となる見込み。この11%減を日本の年間輸入量に置き換えると7年から8年分収穫減できない状態となり、価格高騰だけではなく、絶対数が不足するということになる」と指摘する。
カカオ豆の絶対数の不足により来春頃から売場でチョコレート商品が減少する恐れがある。
このような状況を踏まえ、ブルボンでは、「アルフォート」などチョコレート菓子や準チョコレート菓子を拡充しつつ、チョコレート売場を補完すべく多彩なビスケット商品を提案していく。
チョコレートの補完にビスケットが好適な点については「ビスケットはチョコレートと同じく甘さを楽しむお菓子であることが挙げられる。スナックや米菓はもともと棚本数が多いため、棚本数を増やすメリットが少ない」と説明する。