エリアにあわせた戦略で需要開拓
日清食品ホールディングス欧州事業の売上が直近5年で約3倍に拡大した。欧州エリアにおける基本コンセプトは「Authentic Asia」。独自色あるマーケティング施策で「CUP NOODLES(カップヌードル)」を中心にブランドエクスペリエンスを推進、市場への浸透が急速に進んでいる。
「独自色追求、ブランドを自走させる」
同社グループは欧州に進出して約30年を経たが、「Authentic Asia」をコンセプトに掲げたのは2019年だ。その後、欧州事業の売上は同年度74億円から20年度91億円、21年度114億円、22年度173億円、23年度233億円と飛躍的な成長を遂げてきた。今期は売上260億円、出荷数量は約3億食を見込む。
深澤勝義執行役員・CMO(グループマーケティング責任者)兼欧州総代表は「欧州でインスタントラーメン市場の成長を牽引しているのは日清食品グループ」と胸を張る。「かつてはカテゴリー内で競合するグローバルジャイアントと差別化しきれていなかったが、新コンセプトのもとで日清食品グループらしさや日本らしさにこだわったマーケティング施策が奏功し、模倣困難な独自競争力を確立した」。
西欧(ドイツ、イギリス、フランスなど)向けには高付加価値品を積極的に展開。カップ麺の主力品「CUP NOODLES」は「Chicken」「Shrimps」などが売れ筋だ。同ブランドでは焼そばタイプの「CUP NOODLES Soba」もラインアップ。定番の「CLASSIC」やベジタリアン向けの「CHILI」が人気を集める。ブランドのコンセプトは「Asian Blast」。パッケージに筆文字を活用したり、スパイスを効かせた味わいとすることで、コンセプトを体感できるように仕上げた。
深澤執行役員は「欧州ではマーケティングコストが限られる中でブランドを自走させることが重要。これまで商品の売り込みだけでなく、カップヌードルの着ぐるみを使ったユニークな店頭イベントを実施するなど、ブランドの世界観を体験できる施策にも注力してきた。それらの結果、大手スーパーでの取り扱いが増え、周囲の小売業にも波及効果が出ている」と事業拡大の背景を話す。
将来有望な欧州市場
現状、欧州のインスタントラーメン市場で日清食品グループのシェアは第二位で約13%。欧州28か国の中でシェア第三位以内に入る国の数は第一位の14か国となっている。
深澤執行役員は「一口に欧州と言っても国ごとに食文化・経済環境・言語などが異なる。当社は西欧・東欧・南欧のエリア特性にあわせたきめ細かな戦略で需要を開拓している」。
一方、世界ラーメン協会によると欧州のインスタントラーメン総需要は年間約20億食。これを人口約5億人で割った1人当たりの消費量は約4食となる。この数字はアメリカ15食、ブラジル12食などと比べて少ない。また同社がドイツのGenZに行った調査でカップ麺は「外国へ旅行に行った気分になれる」「洗練されていておしゃれな感じがする」など、今後の市場を牽引するGenZに対してカップ麺への好意的なイメージ創出が図れている。
深澤執行役員は「欧州市場の将来は有望で、まだまだ成長の余地がある。即席麺のファウンダーとして個性を発揮し、新たな価値と需要を創っていきたい」と意気込む。