初めて飲むビールは苦いもの。がんばって飲み続けるうちにおいしく感じられるようになってくる、というのがビール好きの言い分だろう。ただお酒の選択肢が多様に広がる昨今では、なじめないビールを無理に飲もうとしない傾向も若者の間で強まっているようだ。
ビールのおいしさを、若い人たちにもっと知ってもらいたい――。そんな思いから、サッポロビールが開発したのが「サッポロ WITH BEER ホワイトエール」。
「『若者のビール離れ』が言われるが、学生や若手社員にインタビューしたところ、みんな意外と興味は持っていることが分かった」。開発を担当した、同社マーケティング本部ビール&RTD事業部の新木絵理氏が語る。
開発にあたっては大学生との意見交換を通じ、若年層のリアルな声を集めた。彼らの多くは周囲になじむために「ビールを飲めるようになって自分の世界を広げたい」と考えている一方で、まだ楽しんで飲むまでには至っていない20代が多いのでは?との仮説を立てた。
「ビールが飲めるってかっこいい、大人の仲間入り、といった感覚がある。ただ特有の苦みへの苦手意識から、飲みきれないと感じている人が多い。ビールが飲めたという喜び、こんなにおいしいビールがあるんだと思ってもらえるきっかけを作れればと考えた」。
小麦麦芽を一部使用するとともに、隠し味としてオレンジピールとコリアンダーシードを効かせた。かろやかで心地よい味わいの、上面発酵酵母によるホワイトエールタイプだ。新入社員らにもブラインドで試飲してもらったところ「飲みやすい」と好評だったという。
「苦みをがまんして、がんばって飲むお酒」といった従来のビールのイメージを払拭し、無理しなくても自分のペースで自由に楽しめるお酒として親しんでもらいたい考え。
引っ張ってくれる先輩のようなビール
一方で「若い人たちにはビールへの純粋な憧れがある。若者向け、初心者向けを謳うのではなく『ビールはビールらしくいてほしい』という声も。フレンドリーでありながら、引っ張ってくれる先輩のようなビールを目指した」。
そんな思いを反映したパッケージは、すっきりと洗練されたデザインに。若手社員や学生の意見を取り入れて絞り込んだという。
大人の世界観を打ち出したマーケティングで若者の支持をつかんだ「サッポロ生ビール黒ラベル」は、10年以上にわたる異例の成長を継続中。そんな黒ラベルでもつかみきれていない、未来のビールユーザーにアプローチする。
「まずは『意外とおいしいじゃん』と思ってもらって、ビールを楽しむことを日常に取り入れてもらう入口にしたい。そんな最初のビールに、サッポロの『☆』マークがついていれば嬉しい」(新木氏)。