昨今暗いニュースが多いなか、大阪では関西ダービーが盛り上がった。取材をしていても脱線して“アレ”話に花が咲く。野球ファンでなくても街全体に流れる熱気を肌身で感じた。
▼阪神タイガースが前回日本一になった1985年、阪神梅田本店で行われた優勝セール売上高は40億円。今年9月に催されたセ・パ両リーグ優勝記念セールは、阪神・近鉄百貨店ともに前年同日比3倍を売り上げた。関西人の財布の紐がハレ消費で緩んだのか近隣店舗にも余波が及び、9月の在阪百貨店売上総額は、全国主要都市平均と比べて15ポイント高かった。
▼続く日本一セールの結果も気になるが、「近年は『セール』という言葉自体がパワーダウンしている」という。昔と時代が異なり、何でも安ければ良いという風潮ではない。価格よりも記念になるモノ、価値を見いだすことができるモノに消費者の心が動く。
▼価格改定して物量が下がったと多く聞くが、好調な一部企業は、価値を高めることに他者以上に熱心で、気概すら感じる。消費者庁が提言する「物価上昇時代にピンチをチャンスに」とはいささかノー天気に感じるが、今年の阪神タイガースのように好機をつかむアンテナは、常に張り巡らせておきたいものだ。