ドラッグストア乱立 苦境の配置薬業界

40年以上、定期的に会社に薬を届けてくれた富山の配置薬業者が商売を終えた。理由を聞くと自身(配置員)も80歳を超えて体力が衰え、長男は後を継ぐ気持ちはなく、廃業を決めたと言う。配置薬(置き薬)とは、家庭や事務所に救急箱を預け、使った分の薬代を支払う。300年以上も前に富山で始まった商法だ。

▼本人は富山から自家用車を走らせ、1回の上京で数件の得意先を回る。20人ほどの事務所なら平均売上は4、5千円。最近のガソリン代や駐車料金の値上がりも懐事情を苦しめている。事務所への配置ならともかく、個人宅の場合の売上はもっと少なく、「割りにあわない」と嘆いていた。

▼利用する側には薬が手元にあるので、いつでも必要な時に利用でき、配置員には健康の悩みなど気軽に聞ける。だがドラッグストアの乱立は大きな痛手。薬剤師が常駐したり、調剤薬局の機能をもつ店もあり、今ではコンビニも市販薬を置いている。

▼配置薬のメリットは、お客さんとダイレクトにつながることによる利便性や安心感にある。ECが蔓延する時代だからこそ消えてほしくない商売だ。