サクラ食品工業 紙容器ミネラルウォーター発売 京都・伏見の水と浮世絵 インバウンド需要、海外市場へ

サクラ食品工業(大阪府吹田市)は、浮世絵柄の紙パック入りミネラルウォーター「清流咲良之舞(せいりゅうさくらのまい)」(内容量330㎖、標準小売価格237円税抜)を発売した。酒どころとして知られる京都・伏見の地下水を使用し、パッケージには画家・絵師の石川真澄氏による、浮世絵柄の描き下ろし作品を施している。石川氏の作品に強い感銘を受けた同社の藤原拓社長が直接、石川氏にコンタクトし商品化が実現した。

描かれているのは、美しい水の中を優雅に舞う浮世絵美人。水の精に見立て、伝統的な技法である「藍摺絵(あいずりえ)」を意識した青の濃淡によって表現されている。石川氏としては初めての色調だという。一方で扇子には同社のロゴ「SKR」が描かれるなど、同氏らしい遊び心も見られる。商品に使われる伏見の地下水はミネラル分をほどよく含んだ中硬水で長年、京都の文化を支え続けてきた。

また、包材はFSC基準で認定された原料を使うテトラパック社製の紙容器。70%以上がリサイクルできる丈夫な繊維で製造されるなど、環境へ配慮している。容器の内側には、移り香が少なくなる特殊な加工フィルムを使用する。藤原社長に新商品に対する意気込みや、自社ブランド商品の展開について聞いた。

紙パック入りミネラルウォーター「清流咲良之舞」(サクラ食品工業) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
紙パック入りミネラルウォーター「清流咲良之舞」(サクラ食品工業)

自社ブランド比率25%目指す 藤原社長

――今回、紙容器入りのミネラルウォーターを発売するに至った経緯を教えてください。

藤原 レッドオーシャンと言われるミネラルウォーターの市場にはもともと進出するつもりはなかったが、日本を代表する古都の一つとして海外でも知名度の高い京都の名水を商品化することで、インバウンド客の需要に応えたいと考え、紙容器入りミネラルウォーターの発売を決めた。

さらに差別化を図ろうとパッケージに趣向を凝らすことを考え、ロックバンドのKISSやスターウォーズなどを浮世絵様式で手掛けた画家・絵師の石川真澄さんにお願いした。

われわれはこの商品をインバウンド向けにホテルや土産物店、空港などへ販売し、輸出も狙っている。それが、浮世絵文化を海外へ広めたいという石川さんの思いと合致した。

実際に展示会に出展すると、外国人の方に注目されることが多い。当社も単なる水ではなく、作品として昇華させ売っていきたいと考えている。インバウンドが復活しつつある中、1%の方に手に取ってもらうだけでも大きな数字になる。それを2%、3%と高めていきたい。また、このパッケージであれば、持ち帰ってもらえるだろうという期待もある。そこからまた世界へ広がっていく。2025年には関西万博も控えており、良いタイミングで上市することができた。

――貴社はOEM商品が中心ですが、自社ブランド商品については今後、どう取り組んでいきますか。

「藤原園 抹茶ゼリー」(サクラ食品工業) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「藤原園 抹茶ゼリー」(サクラ食品工業)

藤原 当社はもともとコーヒーシュガーを製造販売していた。しかし、喫茶店がカフェに替わり市場はピーク時の10分の1以下に縮小した。現在は希釈飲料や調味料のポーションカップ製品、介護食向けの大口径カップゼリー、アセプティック紙容器製品などのOEMを主に行っており、前3月期の売上は計画を大きく上回った。

一方で、自社ブランド商品を作る重要性も感じている。その理由の一つが、自社ブランド商品を作ることで委託メーカーと同じ目線に立てるということ。従業員のメーカー意識が高まり、他社のブランドを預かる立場の重大さを改めて認識できる。

もう一つは、自社ブランド商品が社会に貢献していると実感できること。もちろん、OEMでもそれは可能だが、自社ブランド商品が世の中に広まることで、従業員の社会的な意識がより高まる。それが、われわれの企業ブランドの向上にもつながる。

――自社ブランド商品の売上構成比は。

藤原 一時、10%程度まで高まったが、現在は2%程に落ち着いた。これは自社ブランド商品が落ちたわけでなく、OEMが伸びたことによるもの。いずれは自社ブランド商品を25%まで高めたい。

――そのほかの自社ブランド商品について。

「ちょい鍋狂辛みそ味」(サクラ食品工業) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「ちょい鍋狂辛みそ味」(サクラ食品工業)

藤原 ロングセラー商品「プレミアムキリマンジャロブレンド コーヒーゼリー」のシリーズとして、昨年春「藤原園 抹茶ゼリー」を発売した。当社は20年に竜王工場(滋賀県竜王町)を新設しており、滋賀県の工場で県内産の原料を使った商品を製造したいと考えていた。

今回は日本五大銘茶として知られ、1千200年の歴史がある滋賀県産の朝宮茶を使用。コーヒーシュガーと抹茶を合わせた特製抹茶シュガーを添付している。特に抹茶好きの人たちから高い評価を得ている。

もう一つ、ポーションタイプの個食鍋用だし「ちょい鍋」には昨年、京都の唐辛子専門店「おちゃのこさいさい」の看板商品「舞妓はんひぃ~ひぃ~」とコラボした「ちょい鍋狂辛みそ味」を投入した。従来の4個入だけでなく、2個入も発売した。「違う味も楽しみたいため、少量パックが欲しい」というお客様からの声に応えた新しい形で、店頭で剥がし取るカレンダータイプの2個入は好評だ。

自社ブランドについては売り手、買い手、世間、環境が良くなることを常に意識し、市場から信頼のあるブランドづくりに取り組んでいきたい。