ネスレ日本の支援を起点に子育ての孤立を防ごうとする動きが広がりつつある。
ネスレは、2021年10月に営業開始した沖縄県浦添市の産後ケア施設の設立に協力。このことを報じたニュースに触発され、鳥取県米子市にも助産師常駐のラウンジ併設型産後ケア施設が開設された。
施設名は「産前産後ケアハウスはぐはぐ supported by NESCAFÉ」(鳥取県米子市上福原2丁目9-18)。
同施設もネスレの支援のもと開設され、5月10日に本格営業が開始された。運営は産前産後ケアハウスはぐはぐ合同会社(はぐはぐ)が手掛ける。
9日共同記者会見に臨んだ助産師ではぐはぐ代表社員の宮田樹里さんは「21年に沖縄の産後ケア施設を開設されたという記事を読み“私がつくりたいのはこれだ”と思い、私から連絡をさせていただいた」と振り返る。
宮田さんは、産科・不妊治療を行うクリニックで11年勤務していく中で出産・育児に関する様々な課題に直面。
会見では、出生数の減少・晩産化・子育ての孤立・産後うつの4つの課題を挙げ、このうち産後うつについて「10人に1人が発症するといわれ10人に8人がその予備軍。産後1年間に発症するリスクが最も高い」と指摘する。
このような課題意識から、宮田さんは産後1年間に適切なサポートが受けられるような場所が必要と考え、ネスレの支援を受け22年11月に起業。その後、クラウドファンディングを活用して産後ケア施設の設立資金を捻出した。
産後ケアとは、出産施設退院後の母子を対象に、助産師や看護師が心身のケアや育児の支援をすることを意味する。
21年4月1日に「母子保健法の一部を改正する法律」が施行されたことで、産後ケア事業は利用可能期間が産後4ヵ月から産後1年までに延長され、産後ケア事業の実施は市町村の努力義務に定められた。
鳥取県では無料で産後ケアを受けることができるものの「産後ケア事業を受けるためには市町村に申請し審査で利用可能か否かが判断される。その判断基準として、家族からの援助がない方や母親の心身の不安や育児に強い不安のある方などが挙げられ利用しにくい現状がある」という。
米子市には産後ケアを実施している病院が複数ある一方で、産後ケアに充てられるベッド数が不十分であることにも触れる。
「産前産後ケアハウスはぐはぐ」は、このような課題を補完するもの。
助産師が運営するラウンジ併設通所型産後ケア施設として、市町村の産後ケア事業を受託しているほか、気分転換や交流といった様々な用途で利用できる。
「無料で受けられる行政委託産後ケア事業はもちろん、審査基準に満たない方や里帰りの方、すぐに産後ケアを利用されたい方に私費でのオリジナル産後ケアを用意している」と説明する。
ラウンジを予約不要で利用できるようにして「子育てする家族が集える場所」にもしていく。ラウンジは「Yogibo(ヨギボー)」のビーズソファを用意しゆったり過ごせるように設計されている。
ラウンジの利用料金はドリンク込みで1時間500円・30分250円。専用アプリでラウンジの残席が確認でき、QRコードを使用してキャッシュレスで利用料金を支払うこともできる。
ネスレ日本の支援内容は以下の主に3つ。
――「ネスカフェ」を中心に人が集い、リラックスタイムを過ごすという考え方をノウハウとして提案
――「ネスカフェ ゴールドブレンド カフェインレス エコ&システムパック」のサンプル品を無償提供
――「ネスカフェ ゴールドブレンド カフェインレス エコ&システムパック」を淹れるためのコーヒーメーカー「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」を寄贈
カフェインレスコーヒー以外のドリンクメニューのための業務用ディスペンサーマシンは有償のレンタル契約で設置されている。
ネスレが設立協力した沖縄県浦添市の産後ケア施設には、オープンから1年間、「ネスカフェ ゴールドブレンド カフェインレス エコ&システムパック」のサンプルを提供。同商品は現在、同施設に購入されている。
ネスレ日本の髙岡二郎レギュラーソリュブルコーヒー&システム・ギフトボックスビジネス部部長は、今回の支援をネスレのパーパスに則ったものとした上で「(育児で)大変なときに飲むコーヒーは普段のコーヒーとは異なるものになると思っている。製品を体験していただくことでブランドを好きになってもらいたい」と期待を寄せる。
来賓に招かれた米子市の伊木隆司市長は「企業の方にこのようなちょっとしたサポートをしていただけるだけでも非常に大きな力になる。少子化対策を米子市としてもさらに充実させていきたい」と述べる。
【写真】ネスレ日本が設立支援した「産前産後ケアハウスはぐはぐ supported by NESCAFÉ」の外観