缶コーヒーでアルコール代替に挑む 「タリーズコーヒー」から無糖ブラックコーヒー炭酸が登場 黒ビールのような味わいを志向

 伊藤園は5月8日、「TULLY’S COFFEE(タリーズコーヒー)」ブランドから無糖のブラックコーヒー炭酸「TULLY’S COFFEE BLACK&SODA GASSATA(ガッサータ)」(370mlボトル缶)を新発売してアルコール代替ニーズを開拓していく。

 過去、飲料市場で、コーヒーと炭酸を組みわせた“コーヒー炭酸”がいくつか出されたが、どれも定着には至らなかった。

 定着に至らなかった理由は、液体に炭酸ガスを注入するとpH(ペーハー=溶液中の水素イオン濃度)が下がって酸っぱくなり、コーヒーにそぐわなくなってしまう点にある。

 4月27日発表した伊藤園の内山修二マーケティング本部副本部長は「pH4を下回ると酸っぱいコーヒーになってしまう。そこで酸っぱさを打ち消そうと甘味を足してしまうと、今後はフレーバー炭酸飲料のようになってしまい、コーヒーの世界からかけ離れてしまう」と指摘する。

伊藤園の内山修二マーケティング本部副本部長 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
伊藤園の内山修二マーケティング本部副本部長

 「タリーズコーヒー」では無糖・ブラックカテゴリーをブランドの中核に据えていることから、無糖でおいしさを兼ね備えたコーヒー炭酸の開発に挑んだ。

 半年以上かけて100回以上の試作を重ね、製造テストも数回繰り返して完成に漕ぎつけたという。

 原材料にはアラビカ種コーヒー豆を100%使用し、エスプレッソコーヒーに炭酸を加え、炭酸がコーヒーのコクを引き立てて、すっきりと爽快な味わいに仕立てられている。
「目指したのが黒ビールのような味わいで、pHは4を切ったままだが、豆の種類や抽出・焙煎を選び、ガスボリュームを調整してpHの問題をクリアした」と振り返る。

 ボトル缶を採用した理由の1つに「一般的な炭酸飲料として見られたくない」との思いがある。
加えて「広口のボトル缶は注ぎやすく、コーヒーの香りをしっかり楽しんでいただける」ことも理由に挙げる。

 オススメの飲み方はグラスに注いでスタウトのようなクリーミーな黒泡を楽しむ飲み方で、27日開催された発表会ではビアバー「麦酒大学(ビールだいがく)」学長の山本祥三さんが推奨の注ぎ方を実演。注ぎ方の動画も公開している。

 「ボトル缶から直接飲むのと、グラスに注いで飲むのとでは全く味の感じ方が異なる。このように味の違いが楽しめるのも魅力」と語る。

 黒ビールのような味わいのコーヒー炭酸で、コーヒーユーザーほか、Z世代や、あえてアルコールを飲まないことを選択するソバ―キュリアス志向層に向けてもアプローチしていく。

 想定する飲用シーンは、ゴルフなど車で向かうレジャーシーンや飲食店でのアルコール代替シーン。
 「アルコール飲料の棚ではノンアルコール飲料が物凄く増えている。当社は清涼飲料メーカーだが、ノンアルコールの領域にも清涼飲料から、さらにアプローチしていきたい」と意欲をのぞかせる。

【写真】「TULLY’S COFFEE BLACK&SODA GASSATA(ガッサータ)」推奨の注ぎ方を実演する「麦酒大学(ビールだいがく)」学長の山本祥三さん