三菱食品 菓子事業の戦略と方針 国内地域振興がテーマ

菓子卸ビッグ4の一角である三菱食品。メーカーポジションとしても「HARIBO」や「かむかむ」などのブランドを持つほか6月には「リンツ」の正規代理店として販売をスタートする。フルラインでの強みを持つ業界屈指の食品総合卸だが、全体売上の約13%シェアである菓子カテゴリーにフォーカスし取締役常務執行役員商品統括の細田博英氏に話を聞いた。

――23年3月期の概況はいかがでしょうか。

細田 菓子業界全体では物量は若干落ちているものの、3%増と価格改定が影響し増収となっている。わが社の数字はまだ固まっていないが、前期比では増収ペースできている。上期は、米菓メーカーさまの火災による供給ストップが大きく影響し低調だったが、下期は人流回復も手伝って全般的にどのカテゴリーも好調だった。

特にスナックやキャンディーが牽引した。キャンディーはグミが良かったことに加え、コロナから生じるのどの痛みを緩和するため国内外の方がのど飴をたくさん購入して“のど飴バブル”となり12%増となった。

また、プラスに転じた要因として、今まで価格転嫁が難しくステルス値上げが主流だったが、マークアップ方式で棒上げをしたことが大きく影響した。

――「地域貢献・地域創生プロジェクト」を推進されています。

細田 地域の隠れた商材や名産品の紹介、地域課題の解決に向けた取り組みを実施している。昨年度は、愛媛県産温州みかんの果汁搾取後の皮を使用し、環境配慮型のキャンディーを榮太樓總本舗ブランドで発売した。「かむかむ」は全国の果汁を使用しているので地域果汁のデータベース化に尽力しているところ。

また、3月30日に広島県と包括的連携協定を締結し、フレスタさん、八天堂さんと商品開発を実施。同商品はG7広島サミット開催のロゴ使用も認可され、すでに店頭で発売している。

地域振興はこれからのテーマと考え専用の部局を設置、全国で地産や地元企業との販売を行っていく。場合によってはスペックを見直し、海外輸出のお手伝いも積極的にやっていく。

――数々の輸入ブランドをお持ちですが、6月にはリンツが始まります。

細田 「HARIBO」は昨年度、CMの反響もあり商品がタイトになるほど好調だった。「ゴールドベア」が圧倒的に売れているが、23年度はセカンド・サードフレーバーの配荷率を上げていく。2か月おきに新商品を投入し、7月にはスーパーマリオとタイアップした商品の発売を予定するなど前年比30%増を計画している。

リンツについては、6月から正規販売代理店として始動しリンツ社の期待も高い。日本では輸入菓子という位置付けだが、リンツ社としてはプレミアムカテゴリーとして伸ばしていきたい考え。ギフトを強化し一般流通への配荷を強化するとともにプロモーションをかけて訴求していく。24年度50%増、25年度30%増としており、現状の倍以上の数値を計画している。

次のステージは輸出強化

――今期の方針を教えてください。

細田 サプライチェーンにおける課題解決に向けた施策を一気に加速させるため「デジタルプラットフォームの構築」を推進してきた。施策としては、unerryの位置情報を活用したデジタル販促での誘客や、サイネージで購買動機をつけ実際の購買につなげていく。PoCを繰り返し昨年後半から実装し始めており、誘客は小売さんから、サイネージはメーカーさんから期待や評価をいただいている。

また、フルカテゴリーを持っている強みを生かし、菓子売場と連動することで商品の露出に貢献していく。菓子はチラシ販促が減りEDLPが多くなる中、単品訴求が難しいので季節催事や旬を切り口に店頭で露出し消費者に提案していく。売上の計画としては、値上げのインパクトはあるものの前年同様でみている。

――開発に関してはいかがですか。

細田 堅調に推移している自社ブランド強化に加え、小売さんの留型や地域戦略上の留型も実施していくが、人口減少が加速するなか、次のステージは輸出の強化となってくる。開発としては海外のみの商品を作るのではなく、国内商品が海外でも耐えうるだけのスペックで製造することが極めて重要と考えている。

今期はアメリカと東南アジアが中心になると思うが、営業拠点作りとパートナーとの取り組みの開始が大きな課題。新事業領域なので目標設定は難しいが、まずは思い切って挑戦していく。中長期の計画では先ほどのデジタル販促や輸出の新事業領域が中心となってくるだろう。

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