東洋水産「マルちゃん」 北海道No.1に歴史あり 「やき弁」圧倒的強さ

北海道の即席麺市場では、東洋水産の「マルちゃん」ブランドが圧倒的な存在感を誇る。スーパーなどの売場を見ると、道民にソウルフードと呼ばれる「やきそば弁当」を筆頭に、「ダブルラーメン」「マルちゃんラーメン」などの道内限定商品がところ狭しと並べられ、他社の追随を許さない。強さの秘訣には、約60年前にいち早く現地工場を建設するなど道民に愛されてきた歴史がある。柳澤秀樹執行役員北海道事業部長、横山哲也北海道支店長らに話をうかがった。

同社が北海道に初めて拠点を置いたのは1963年、釧路におけるすり身原料の加工工場だったという。翌64年、札幌市に即席麺工場が稼働。第1弾商品として、お得な2食入りの袋麺「ダブルラーメン」を発売した。柳澤事業部長は「即席麺業界では一番乗りだった。まだ流通網が発達していない時代に大きな強みとなったことはもちろんだが、地元の好みにあわせた味作りも支持されたようだ」と話す。ちなみに「マルちゃんラーメン」(しょうゆ味・みそ味・塩)は、東北・信越・静岡向けなどの製品とパッケージデザインが酷似しているが、北海道バージョンとは味わいが異なる。

「やきそば弁当」(東洋水産) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「やきそば弁当」(東洋水産)

「やきそば弁当」(以下「やき弁」)が登場したのは1976年だ。飽きのこない味わいのソース、具材の鶏肉ミンチ、麺の戻し湯で作るスープ付きで親しまれている。実はこのスープ、当初は初回限定の予定だったが、あまりに好評だったため継続することになったという。また「やき弁」は75年に本州で先行発売された過去がある。その後、本州向けは終売し北海道のみで製造する正真正銘の道内限定品となった。

現在、定番のラインアップはレギュラー、「シーフード味」「ネギ塩味」「コク甘ソース」「たらこ味バター風味」「ちょい辛」の6フレーバー。カップ焼そばとしては異例の豊富さで、道民に深く浸透した「やき弁」だからこそ成立する。直近ではカーリングチーム「ロコ・ソラーレ」監修の新商品「北見焼肉味」(23年2月発売)がヒットした。世界で活躍するトップアスリートの彼女らをして「私たちも遂に『やき弁』とコラボできるまで来たか」と言わしめたという。

「ダブルラーメン」(東洋水産) - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
「ダブルラーメン」(東洋水産)

一方、強豪ひしめくチルド麺市場でも道内のシェアはトップ級。北海道工場で製造する「マルちゃん焼そば3人前」シリーズをはじめ、「B-1グランプリ」入賞のご当地グルメを再現した「小樽あんかけ焼そば2人前」も人気商品だ。東日本の定番「北の味わい」シリーズ(2食生ラーメン)は、地元の嗜好に合わせた道内限定品を展開する。

なお、北海道事業部の営業スタッフは27人。北海道支店を中心に、旭川営業所、帯広営業所、函館営業所の4拠点で取引先をきめ細かくフォローする。柳澤事業部長は「各エリアで実際に生活することで、その土地に根差した営業活動ができる」との想いを話す。

北海道工場については鈴木實工場長が説明。現地(小樽市銭函)には1994年に石狩第1冷蔵庫を設置し、2003年に生麺・魚肉ハムソーセージの製造工場が稼働。12年に札幌市にあった即席麺工場を移設・稼働させ、道内の生産・開発・営業・冷蔵部門の集約が完了した。現在は即席麺・チルド麺・魚肉ハムソーセージを道内だけでなく全国に供給している。

 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)